労働党政権もインド太平洋重視=日本は継続的働き掛けを―英専門家
【ロンドン時事】7月4日の英総選挙は、与党保守党が大敗し、最大野党の労働党が14年ぶりに政権を握ることが確実視されている。選挙結果が日英関係に及ぼす影響などについて、英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」のロバート・ウォード日本部長に聞いた。
―現在の日英関係をどう見ているか。
非常に良好で(1902年の条約による)日英同盟以来の親密な関係ではないか。英国の欧州連合(EU)離脱前は経済中心だったが、より戦略的になり、安全保障にも焦点が当たるようになった。日本が第2次安倍政権以降、インド太平洋地域への関心を国際的に広げる努力をした結果だ。
―英加入が承認された環太平洋連携協定(TPP)や日英伊の次期戦闘機共同開発への影響は。
労働党政権はEUとの関係改善を図る可能性があるが、地政学的に重要なインド太平洋地域に背を向けることはないだろう。TPPや次期戦闘機の開発は変わりなく進められるはずだ。
―防衛政策に変化はあるか。
労働党は伝統的に防衛政策に弱いと言われてきた。80年代に反核や軍縮を推進したことに起因する。労働党はこうした評判を覆すため、米豪との安保枠組み「AUKUS(オーカス)」を支持するなど、既存の取り組みを維持するだろう。
―中国に対する姿勢はどうか。
労働党は弱腰と見なされないよう中国に厳しい姿勢を取る必要がある。(親中派として知られる保守党の)オズボーン(元財務相)の下で進めた中国との「黄金時代」は戦略的ミスだったと広く認識されている。主要政党間で中国政策に大きな変化はないだろう。
日本は中国に対する優れた専門知識を持ち、西洋にない文化的理解がある。日本はインド太平洋地域の重要性を継続的に訴え続ける必要がある。
―今秋には米大統領選が控えている。
トランプ氏が勝利すれば、日英関係がより重要になる。ミドルパワー(中堅国家)として、両国は協力してルールに基づく秩序を守らなければならない。バイデン氏が勝利しても、両国は米国がこれまでのような(国際情勢への)関心を持たなくなる可能性に備える必要がある。
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◇ロバート・ウォード氏
ロバート・ウォード氏 英誌エコノミストの調査部門で編集ディレクターを務めた後、2019年に英シンクタンク「国際戦略研究所(IISS)」の初代日本部長に就任。地経学・戦略担当ディレクターも兼務する。1989~96年に日本に住み、日本公社債研究所(現格付投資情報センター)に勤務。ケンブリッジ大で修士号取得。
[時事通信社]
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