ビジネス上の人権侵害に懸念=国連報告書、地方・中小に課題―日本企業の対応急務
日本の「ビジネスと人権」に関する訪日調査の最終報告書が、ジュネーブで開催中の国連人権理事会に提出された。報告書は、この問題での日本の行動に「重要な前進」が見られると評価した一方、職場での女性や外国人労働者、性的マイノリティーらに対する差別的な待遇に懸念を示した。地方や中小企業での取り組みの遅れも指摘。日本政府と企業は対応の加速が求められる。
報告書は、国連のビジネスと人権作業部会が昨夏に実施した政府や企業、労働組合などへのヒアリングに基づいて作成。ビジネスにおける人権擁護というと海外の原材料調達先での児童労働や強制労働の禁止などが焦点となるが、男女間の賃金格差や長時間労働など日本企業全般に関わる問題点を指摘している。
特に日本のビジネス社会に織り込まれた性的役割に関する固定観念といった「不平等と差別を生み出す構造の解体が急務だ」と強調。地方や中小企業での取り組みの強化や政府に対する通報窓口や救済を担う独立機関の設置を要請した。
今後、中小を含めて日本企業に求められるのは、人権尊重の責任を果たすことを約束する「人権方針」の策定。さらに事業活動に伴う人権侵害のリスクがないかどうかを把握する「人権デューデリジェンス(DD)」を実施し、その是正に取り組むことだ。
欧米では、取引先などサプライチェーン(供給網)を含めた人権DDの実施を義務付ける法制化が進んでおり、日本でも大企業から対応は始まっている。ただ、日本貿易振興機構(JETRO)が2022年度に実施したアンケート調査では、日本の人権DDの実施率は大企業で28.0%、中小企業で7.8%にとどまっている状況だ。
JETRO調査部の森詩織課長代理は「日本国内の自社の人権侵害であっても、海外企業との取引に影響が出る可能性がある」と指摘。逆に人権尊重を重んじる企業は取引拡大など「非常にプラスの面がある」と話し、「経営トップのコミットメントの下、できることから始めることが大事だ」との考えを示した。
[時事通信社]
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