遺跡保護か経済か=観光公害防止でジレンマ―ペルー・マチュピチュ
観光客増加で住民生活や観光資源に悪影響が出るオーバーツーリズム(観光公害)が世界各地で問題となる中、南米ペルーの世界遺産マチュピチュ遺跡では構造物の破壊や劣化を防ぐため、入場者数制限などの厳しいルールを設けている。一方、コロナ禍後の観光客の戻りは鈍く、「遺跡保護は重要だが、地元住民の生活に観光業は欠かせない」(観光当局高官)というジレンマも抱える。
インカ帝国時代の15世紀ごろアンデス山脈の尾根に建設された「空中都市」マチュピチュは、南米屈指の観光スポット。しかし、世界的に人気が高まるにつれ、外国人観光客が遺跡に登ったり破壊したりする迷惑行為が横行し、遺跡の劣化が進行。昨年には石造りの構造物がすり減り、一部が非公開となった。
劣化防止に向け、政府は観光ルールの厳格化を進めている。2017年から公認ガイドの同伴を義務付けたほか、入場者数と滞在時間も制限。今年は1日4500人、見学は4時間が上限だ。入場券は事前予約制で、外国人の料金は国内客の約2倍に設定されている。
こうした制限に対し、現地ガイドの女性は「駆け足の見学にならざるを得ない。歴史を学んでほしいのに残念」と複雑な表情。一方、見学時間が制限されたことで繰り返し遺跡を訪れる人が増え、観光客の現地滞在期間が結果的に延びたと好影響を指摘する観光事業者もいた。
コロナ禍前は年間約150万人がマチュピチュを訪れたが、昨年は約95万人に減少し、ペルー全体の観光客も回復していない。貿易観光促進庁のクラリシア・ティラド長官は、マチュピチュを「持続可能な観光地とするため、遺跡の保護と経済活性化とのバランスを探る必要がある」と強調。解決策として観光客の分散化を目指す考えで「マチュピチュ以外の観光地のPRにも力を入れる」と語った。
[時事通信社]
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