岸田首相、在職1000日=戦後8人目、浮揚の兆しなく
岸田文雄首相の在職日数が29日で1000日を迎えた。戦後8人目の大台達成だが、内閣支持率は依然低迷。次期衆院選を控えて危機感を強める自民党内では「岸田離れ」が加速する。さらなる記録更新には、9月に想定される党総裁選がハードルとなるが、政権浮揚の兆しはなく、再選に向けた視界は不良だ。
首相は28日、首相官邸で記者団に「毎日毎日、緊張感の中で課題に取り組んだ。この積み重ねが今日だ」と振り返った。党総裁選の対応については「結果を出すことに全力で取り組んでいる。それ以上のことは今、考えていない」と述べるにとどめた。
戦後の首相は計35人。在職日数のトップは安倍晋三氏で、3188日は戦前も含めた憲政史上最長だ。沖縄返還を実現した佐藤栄作氏が2798日、日米安全保障条約締結や憲法制定を手掛けた吉田茂氏が2616日で続く。
首相が会長を務めた宏池会(岸田派)の出身者で1000日に達したのは、「所得倍増計画」を掲げて高度経済成長を推進した池田勇人氏のみ。総裁再選を果たして2026年1月25日まで務めれば同氏に並ぶ。
首相は就任以来、防衛力強化や原発再稼働・新増設などの政策転換を断行。党内でも政策を評価する声は少なくなく、首相周辺は「歴代政権が触れなかったものを前に進めた」と胸を張る。
ただ、自民の派閥裏金事件の対応では、根回し不足など党内調整の「稚拙さ」(党重鎮)や、首相自身の処分見送りなどへの不満が噴出。改正政治資金規正法の成立を優先して他党に譲歩したことで、政権の「後ろ盾」である麻生太郎副総裁との間にあつれきが生じる代償も負った。
首相は、デフレ脱却や憲法改正などの政策実現が「道半ばだ」として、政権維持に意欲を示す。「首相はへこたれていない」。最近会食した自民幹部はこう語るが、党内からは「1000日やれば十分だ」(中堅)と冷ややかな声も漏れる。
公然と退陣論が出る中、一時代を築いた先達と肩を並べ、レガシー(政治的遺産)を残せるか。首相は正念場の夏を迎える。
◇在職1000日超の戦後首相
1 安倍晋三 3188日(アベノミクス、集団的自衛権の行使容認)
2 佐藤栄作 2798日(沖縄返還)
3 吉田茂 2616日(日米安保条約締結)
4 小泉純一郎 1980日(郵政民営化、北朝鮮拉致被害者帰国)
5 中曽根康弘 1806日(国鉄民営化)
6 池田勇人 1575日(所得倍増計画)
7 岸信介 1241日(日米安保条約改定)
8 岸田文雄 1000日(防衛力の抜本的強化、派閥解散)
(注)敬称略。丸カッコ内は主な実績など。岸田氏は29日現在
[時事通信社]
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