絶えない飲酒事故=背景に依存症も―児童5人死傷から3年・千葉
千葉県八街市で飲酒運転のトラックが小学生の列に突っ込み、5人が死傷した事故から28日で3年となった。飲酒運転事故はその後も絶えず、昨年は約2300件で前年から増加に転じた。背景の一つとしてアルコール依存症が指摘される。
「依存症の人は『どうして飲んでしまうのだろう』と泣きながら酒を飲んでいる」。飲酒をやめるための自助グループ「千葉県断酒連合会」理事長を務める塩川裕昭さん(58)は、自身も苦しんだ病気についてこう説明する。
診断されたのは26歳の頃。司法試験で不合格が続いたストレスから寝酒が習慣化し、いつしか気を失うまで深酒するようになっていた。小学校の図書室司書に就いたが、同僚や生徒から「酒臭い」と指摘され、辞職を余儀なくされた。
多いときは1日で一升瓶を空け、酒癖を注意する家族に手を上げたことも。「当時はうつ状態。飲み方に問題があることは分かっていたが、一度飲み始めると止まらなかった」。酔ったまま運転しても「事故を起こすことはないという心情だった」と振り返る。
立ち直りのきっかけは、35歳で入会した「断酒会」だった。酒に関する体験を臆さずに語り合う仲間の姿に、「ここしかない」と感じた。「依存症は孤独に陥りやすい。同じ境遇の仲間と支え合う以外、断酒の方法はない」と断言する。
八街市の事故でトラックを運転した男(63)=服役中=は、事故の直前に酒を購入。公判でも「週に2~3回飲酒運転していた」などと述べていた。
「男は依存症の可能性もあったのでは」と指摘するのは、旭中央病院(同県旭市)の精神科医、川副泰成さん。県から依存症の専門医療機関として指定されており、飲酒事故をきっかけに来院する患者もいる。
川副さんによると、「アルコール依存は脳のシステムの問題。他の病気との併発も多く、特効薬や根治療法もない」。ただ、仲間の努力を見て立ち直りの意欲が芽生える場合もあるといい、「アルコールを一人でやめることは難しい。当事者同士のつながりも治療の動機付けとして有効だ」と強調する。
[時事通信社]
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