2024-06-22 15:51スポーツ

向き合い続けた心=バイルス、輝き色あせず―体操・パリの灯は近く

世界体操女子団体総合決勝でゆかの演技を終え、笑顔を見せるバイルス=2023年10月、ベルギー・アントワープ

 体操女子のスター、シモーン・バイルス(27)=米国=はパリ五輪で主役の一人になり得る。驚きの跳躍力や、誰もまねできない大技だけが理由ではない。4冠に輝いた2016年リオデジャネイロ五輪に続く活躍が期待された東京五輪では、大会中にメンタル面の不調により一時離脱。長い療養を経て復帰したドラマがあるからだ。最近出演したポッドキャストの番組で、苦悩の日々を振り返った。
 異変は団体決勝前からあった。イップスのような症状による空中感覚の乱れ。出だしの跳馬は何とか着地したが、「内心はパニック状態」。次の種目から棄権した。エース不在の米国は3連覇を逃して銀メダル。「母国や世界から憎まれると思った。SNSでは何を書かれているのか。それしか考えられなかった」。罪悪感で自分を責めた。
 心を傷つけたのは競技面の不調だけではない。米国代表の元チームドクターによる大規模な性的虐待問題では、被害者として涙ながらに証言したこともあった。「ひどい出来事が何年も積み重なって、トラウマが(一気に)現れた感じ」
 東京五輪後は2年ほど競技から離れ、治療を受けてきた。復帰後の昨年、世界選手権で個人総合など4冠を達成。輝きは全く色あせていなかったが、罪の意識はまだ心の隅に残っている。「いい日もあれば、悪い日もある。まだセラピーに取り組んでいる」
 今月2日まで行われた全米選手権では4種目合計60点超の驚異的なスコアを挙げるなどし、最多記録を更新する9度目の制覇を果たした。「切り替えて前を向く方法を知っている。それが長年のセラピーの成果」。パリでは抜群の演技だけでなく、自身の心との向き合い方にも注目が集まる。 (時事)
[時事通信社]

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