進出日系企業に動揺=蘇州母子負傷事件―中国
【蘇州時事】中国江蘇省蘇州市で24日に日本人母子らが刃物で切り付けられた事件で、地元当局は25日、中国人の男(52)の犯行だと発表した。米中対立の激化や東京電力福島第1原発の処理水海洋放出などを受け、中国の一部では対日感情が悪化。男が日本人を狙って無差別に危害を加えようとしていたという見方が出ており、中国に進出する日系企業に動揺が広がっている。
事件が起きたのは日本人が多く居住する地域で、日本人学校にも近い。男は日本人学校の送迎用スクールバスを待っていた母子を負傷させた後、バスに乗り込もうとしていたとされる。動機は明らかにされていないが、日本人を標的にした計画的な犯行だった可能性がある。
中国各地の日本人学校は、コロナ禍が終わり、家族帯同の駐在員が増えたため、一時激減した児童・生徒数は回復傾向にある。一方で、昨年の処理水放出以降、蘇州市の日本人学校は、卵が投げ込まれるなど嫌がらせの標的にもなってきた。
今回の事件を受け、中国に進出する日系企業関係者の間で不安の声が上がっている。蘇州市に拠点がある日系機械大手企業関係者は「家族のマインドケアが必要な社員には在宅勤務を認めた」と明かした。
中国の景気回復が遅れる中、中国側は海外からの投資誘致に力を入れているが、米中対立や反スパイ法改正の影響で、日本企業の反応は鈍い。日系商社の駐在員は、今回の事件について「(日中関係の)新たなマイナス要因だ」と指摘。「長期的には対中投資の冷え込みにつながる可能性もある」と語った。
在上海日本総領事館の赤松秀一駐上海総領事は25日、呉慶文蘇州市長と面会し、邦人社会の安全確保などを求めた。総領事館によれば、日本人学校は事件を受け、25日は休校としたが、26日から登校を再開する。
[時事通信社]
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