北朝鮮の武器支援「合法化」狙う=ウクライナ侵攻のプーチン政権
ロシアのプーチン大統領は19日、平壌で北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記と会談後、両国の「包括的戦略パートナーシップ条約」に署名した。「一方が武力侵攻を受けた場合の他方による軍事援助」をうたっており、ウクライナ侵攻で既に進めている軍事協力を事後的に「合法化」する狙いもあるとみられる。
両国は認めていないが、北朝鮮は昨年来、ロシアに「砲弾約480万発、弾道ミサイル数十発」(韓国の申源※(※サンズイに是)国防相)を提供。実際、ウクライナ北東部ハリコフ州に撃ち込まれたミサイルの残骸が、北朝鮮製と確認された。今月の先進7カ国首脳会議(G7サミット)の共同声明は、ロ朝の軍事協力を「可能な限り最も強い言葉で非難」した。
ロシアはウクライナ危機で、法的根拠のない実力行使の後、国内法を整備するなどして追認する手法を繰り返してきた。ウクライナ東・南部を占領後に「ロシアの歴史的領土」と言いだし、憲法改正などを経て一方的に「編入」。ロシア民間軍事会社「ワグネル」が受刑者で決死の突撃部隊を編成した際は、恩赦による戦闘員採用を正式に認める法整備を事後的に行った。
プーチン政権は当初、侵攻は「特別軍事作戦」だと言い張ったが、次第に北大西洋条約機構(NATO)に仕掛けられた「戦争」と主張するようになった。ロシアにとって「有事」と位置付けることで、新条約を根拠に北朝鮮からの武器支援を「2国間では合法」と強弁する思惑が透ける。
北朝鮮との武器取引は、国連安保理による北朝鮮制裁決議で禁じられている。プーチン氏は19日の共同記者発表で「制裁決議は見直されるべきだ」と明言。国連の場で今後、働き掛けを強めるとみられる。
ロシアは今年、北朝鮮制裁の履行状況を調べる国連専門家パネルの任期延長に拒否権を行使し、廃止に追い込んだ。ロ朝の軍事協力を進める環境整備の可能性がある。
[時事通信社]
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