冷戦期の「軍事同盟」復活=北朝鮮、新条約に「満足」
【ソウル時事】ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記は19日、ロ朝関係を「包括的戦略パートナーシップ」に格上げする条約に署名し、結束を誇示した。ロ朝はウクライナ侵攻を契機に武器取引で急接近。協力関係を条約で安定的なものにした上、米ソ冷戦時代のような「軍事同盟の水準」まで引き上げ、日米韓に対抗する姿勢を鮮明にした。
「偉大な条約の締結を大変満足に思う」。侵略を受けた場合の相互支援を定めた新条約に署名後、正恩氏は共同記者発表でこう胸を張った。
日米韓3カ国は、核・ミサイル開発にまい進する北朝鮮に対応するため、安全保障協力を強化してきた。一方、北朝鮮は2019年の米朝首脳会談決裂以降、ロシアや中国との関係を強化し、日米韓対中朝ロの「新冷戦」を描き出す路線に転換。今回の会談は、この路線を固める上で大きな前進となった。
正恩氏は会談で「ロシア政府と軍、人民への全面的支持と連帯を表明する」と、ウクライナ侵攻への支持を強調。北朝鮮は侵攻で不足する砲弾や短距離弾道ミサイルなどを大量に提供し、ロシアは偵察衛星といった軍事技術や食料などを支援しているとされる。会談でも、こうした取引の進展が議論されたもようだ。
ただ、ロ朝の接近を巡っては「ウクライナ侵攻という特殊な国際環境下の協力で、安定性に限界がある」(韓国政府関係者)と指摘されていた。ロシアとウクライナが将来停戦に至れば、ロ朝関係も揺らぎかねないためだ。北朝鮮はロシアとの協力の安定化を図るため、旧ソ連と結んでいた軍事同盟の復活を目指した。
旧ソ連と北朝鮮が1961年に結んだ「ソ朝友好協力相互援助条約」には、一方が武力攻撃を受ければ他方が全ての手段で軍事援助するという自動参戦条項が含まれていたが、ソ連崩壊後に失効。新条約は北朝鮮の望み通りの内容となり、正恩氏は「世界の地政学的構図において、共和国(北朝鮮)とロシアの占める地位は間違いなく変わった。関係発展の分水嶺(れい)となる同盟(の船)は、きょう出港した」と誇った。
一方、新条約には日米韓のみならず中国も不快感を抱く可能性がある。今後、北朝鮮にとり中国との関係をいかに管理するかが課題になりそうだ。
[時事通信社]
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