伝統と違っても=杉野、大技引っ提げパリへ―体操・パリの灯は近く
「体操ニッポン」の伝統は、手足の先まで伸びた美しい姿勢と言われる。それとは少し異なる道を歩んできたのが、パリで初めての五輪に挑む男子の杉野正尭(25)=徳洲会=だ。演技の出来栄えや美しさを評価するEスコアと、技の難度を示すDスコアの合計点で争う競技。「Eスコアでは戦えない」と自己分析する杉野が、5枠しかない日本代表の座を勝ち取れたのはなぜか。
周囲と比べて倒立技や空中姿勢が見劣りすることに気付いたのは、福井・鯖江高の頃だった。体に染み付いた基本姿勢はなかなか直せない。でも、へこたれなかった。「Dスコアを上げるしかない」。研さんを重ねてたどり着いたのが、今回の五輪代表選考会で見せた大技の数々。あん馬の「Hコンバイン」や鉄棒の「ペガン」は、世界的にも実施する選手が少ない高難度の芸当だ。
同じ所属でパリ切符をつかんだ新鋭・岡慎之助の体操を、徳洲会監督の米田功氏は「フェラーリ」と表現する。一方の杉野については「自転車」。けなしているわけではない。「そこまでの選手になると思わせないのに、あそこまでできる。そのすごさ」。2004年アテネ五輪団体金メダリストがうなった。
21年東京五輪などの大舞台はあと一歩で代表に届かず、涙を流したこともあった。「僕が行かなくて誰が行くんだ。五輪で金メダルを取る」。はね返されるたび、そう自分を奮い立たせてきた杉野。万感の思いをパリでぶつける。
[時事通信社]
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