海底光ファイバーで津波観測=昨年10月、高知沖で成功―将来の実用化期待・海洋機構
昨年10月に伊豆諸島・鳥島近海で発生した津波を、高知県・室戸岬沖の海底に長距離敷設した研究用の光ファイバーケーブルで観測できたと、海洋研究開発機構が6日発表した。津波が来ると水圧や海底地形が変化し、光ファイバーがわずかに変形・伸縮するため、陸上基地局から送信したレーザー光が反射して戻って来るまでの時間に差が生じる仕組み。
現在は津波の高さを推定できないが、海洋機構の利根川貴志主任研究員は「光ファイバーと海底下の構造の物性をあらかじめ把握できていれば、津波の高さを算出できる。将来は津波の緊急速報に利用できる可能性がある」と話している。
インターネットなどの通信に使用中の光回線は利用できないが、海底ケーブル内に束ねてある回線のうち、空いた線があれば使える。また、地震の揺れも同様の仕組みで観測できる。
日本列島の太平洋側では千島海溝や日本海溝、南海トラフ沿いに地震計と水圧計を一定間隔で配置した海底地震津波観測網が整備され、気象庁が活用しているが、日本海側にはまだない。海底光ファイバーケーブルによる地震津波観測技術が実用化されれば、地震計と水圧計の組み合わせより低コストで観測網を整備できるかもしれないという。
昨年10月9日の津波は関東や伊豆・小笠原諸島から沖縄にかけての沿岸で観測され、気象庁が注意報を発表した。海上保安庁によると、鳥島近くの海底火山「孀婦(そうふ)海山」の噴火により引き起こされた可能性が高い。
海洋機構の海底光ファイバーケーブルは室戸岬付近から南へ100キロ余り敷設されており、地震や津波による変形・伸縮が起きた場所を数メートルから数十メートルの区間ごとに特定できる。2022年1月から南海トラフで起きるゆっくりとした地震の連続観測を続けていたため、突然発生した津波の到来を沖合約60キロから沿岸付近まで観測できた。
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