2024-06-04 20:13社会

「容疑者生存」疑い局面打開=19年に及ぶ捜査終結―警視庁・居酒屋副店長殺害

警視庁本部=東京都千代田区

 2005年に居酒屋の副店長が殺害された事件で、警視庁は元暴力団組員の上地恵栄容疑者=当時(49)=を容疑者死亡のまま書類送検し、19年に及んだ捜査を終結させた。行き詰まる局面を変えたのは、同容疑者の生存を疑う捜査幹部の一言だった。
 05年11月25日、東京都三鷹市内のアパートで、居酒屋副店長永野和男さん=同(53)=の遺体が見つかった。現場に残された上地容疑者の下着には血痕が付着するなどしており、同容疑者が永野さんを襲った際にけがをしたとの見方が強まった。しかし、事件後の同容疑者の足取りはつかめず、捜査は難航した。
 「長年、有力な情報がない。既に死亡しているのではないか」。ある捜査幹部の一言をきっかけに、未解決事件を扱う警視庁捜査1課特命捜査対策室は今年、上地容疑者の死亡を視野に入れた捜査を始めた。下着の血痕を同容疑者のものとみて身元不明遺体などのデータベースと照合したところ、事件約3カ月後に石川県内で見つかった変死体のDNA型と合致した。
 さらに、変死体から採取された指紋は状態が良くなかったため、手作業で鑑定したところ、同容疑者の指紋と一致した。コンピューターでの指紋識別では上地容疑者と結び付かなかったという。
 一般的に未解決事件の捜査は、容疑者の生存を前提に関係者の聴取や情報提供に基づく追跡をする。警視庁は今回のケースを教訓に、他の未解決事件についても容疑者死亡を視野に、現場に遺留されたDNA型の精査や、身元不明遺体との照合作業を進めている。捜査幹部は「今後もこの手法を活用していきたい」と話す。
 捜査員から書類送検の一報を受けた永野さんの妹は「これで事件は終わりですね。ありがとうございました」と話したという。 
[時事通信社]

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