カスハラ、組織で厳格対応=マニュアル策定など相次ぐ―航空・運輸各社
顧客による迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が社会問題化する中、航空や鉄道各社でマニュアルを策定したり、厳格な対応方針を公表したりする動きが広がっている。社員一人ひとりの対応に任せていてはエスカレートするケースも多く、サービスの質を維持しつつ社員を守るため組織対応を強化する。
ANAホールディングスは今月、顧客対応のガイドラインを改訂し、セクハラなど迷惑行為の類型に応じた対応方法をまとめた。原則として複数人で対応し、同意が得られれば録音や録画をして迷惑行為の激化に備える内容だ。
同社によると、2023年度に社内で報告のあったカスハラは288件。空港では暴言や暴行、機内では客室乗務員への長時間拘束やセクハラが多く、体調を崩す社員もいたという。宮下佳子CS推進部長は、誠意のある対応が大前提とした上で、「カスハラに発展した場合は、しかるべき対応を行うことが社員やお客さまを守ることにつながる」と強調する。
鉄道業界でも迷惑行為が後を絶たない。国土交通省によると、鉄道係員に対するカスハラは22年度、全国で1124件に上った。
日本民営鉄道協会は昨年12月にまとめた基本方針で「業界全体でカスハラ撲滅に取り組む」と強調。暴行や脅迫に加え、SNSで同意のない音声や映像を公開してもカスハラになると明記した。
JR東日本グループは今年4月、「(カスハラを行った)お客さまへの対応はしない」との対処方針を発表。カスハラと判断した場合、サービス提供を中止するほか警察への相談も検討する。JR西日本グループも同様に毅然(きぜん)と対応する。
厚生労働省が今月発表した調査では、過去3年間に従業員からカスハラの相談を受けた企業は27.9%に上った。岸田文雄首相も22日の参院予算委員会で、法整備を含めて検討する方針を示した。
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