「何ができたか考えて」=高校生の息子失った母―3教諭、30日判決・那須雪崩事故
栃木県那須町で2017年、登山講習会に参加した県立大田原高校の生徒ら8人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭3人の判決が30日、宇都宮地裁である。事故で息子を失った浅井道子さん(58)が判決を前に取材に応じ、「安全のために何ができたのか考えてほしい」と訴えた。
浅井さんの長男で同高校2年だった譲さん=当時(17)=は17年3月、山岳部員として講習会に参加。講習3日目、雪をかき分け踏み固めながら歩く「ラッセル訓練」をしている最中に雪崩に巻き込まれた。職場にいた浅井さんが事故を知ったのは、長女からの連絡だった。搬送先の病院に行くと、冷たくなった譲さんが横たわっていた。「この子の人生はこんな一瞬で終わってしまうのか」と目の前が真っ暗になった。
教諭3人は、校長とともに事故後2回、自宅に弔問に訪れた。仏壇の前で「申し訳ございませんでした」と手を合わせたものの、在宅起訴されて以降は姿を現すことはなく、不信感が募った。
22年10月の初公判で3人はいずれも「雪崩発生は予想できなかった」として無罪を主張。浅井さんは「どうしてそこまで無罪を主張するのか」と怒りと疑問が湧いた。
「譲はどんな思いで登ったのか」。浅井さんは事故後、同校の現役山岳部員らと一緒に各地の山に登り始めた。これまでに登った回数は15回。重ねるにつれ「安全の意識が高ければ事故は防げたかもしれない」との思いが強くなった。
23年12月には被害者参加制度を利用して法廷で意見陳述し、安全意識が大きく変わった同校山岳部の状況を語った。判決を前に「事故が起きてしまったことは変えられない。私が望むのは一緒に山に出て、安全登山のために何ができたのか、それぞれに向き合って考えてもらうことです」と話した。
[時事通信社]
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