何度もサケ産み出せるニジマス=養殖効率化など期待―東京海洋大
キングサーモンやベニザケなど太平洋のサケ類の多くは産卵後に死んでしまうが、東京海洋大の吉崎悟朗教授らの研究チームは、キングサーモンの卵や精子のもととなる生殖幹細胞を、産卵後も死なないニジマスに移植する方法で、キングサーモンの卵を毎年産ませることに成功した。サケ類の養殖効率化につながると期待される。論文は24日付の米科学誌サイエンス・アドバンシズに掲載された。
キングサーモンなど北太平洋を回遊し、日本や北米など故郷の川に戻って産卵するサケ類の仲間(タイヘイヨウサケ属)の多くは、生涯に一度しか繁殖せず、産卵後に死んでしまう。一方、同属でも比較的原始的なニジマスは毎年産卵が可能だ。
吉崎教授らは、ニジマスとキングサーモンの卵巣や精巣を比較。ニジマスが繁殖後も幹細胞を維持しているのに対し、キングサーモンは使い切っていた。
そこで、ゲノム編集で自身の卵や精子を作れなくしたニジマスの稚魚に、キングサーモンの生殖幹細胞を移植。成長させた「代理親」のニジマスは、キングサーモンのDNAを持つ卵や精子を作り、それを交配させて稚魚も得られた。移植した幹細胞はその後も維持され、代理親は翌年以降も毎年、キングサーモンの卵や精子を作った。
吉崎教授は「キングサーモンは数年かけて成熟させても、一度卵や精子を取っておしまいだが、ニジマスなら飼育も容易で、1年目から繰り返し繁殖させられる」と強調。「生殖幹細胞を凍結保存すれば、絶滅の危機にひんしても、遺伝的に同じ魚を復活できる」と話した。
[時事通信社]
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