王者を追った競技人生=フィギュアの宇野、技術も表現も求めて
長く第一線を走り続けてきた宇野が、戦いの場を去る。
5歳の時、同じ名古屋出身の元世界女王、浅田真央さんに誘われてフィギュアの世界へ。幼い頃から非凡な才能を発揮した。シニアに上がった時期には、羽生結弦さんらトップ選手が次々と高難度の4回転ジャンプを取り入れた。負けじと食らい付き、世界で初めてフリップを成功させた。技術だけではない。表現豊かな滑りを求め、体現してきた。
北京五輪後は、モチベーションの維持に苦しんだ。背中を追い続けた元王者のネーサン・チェン(米国)と羽生さんが競技から去った。五輪以外の主要国際大会は全て勝ったものの「やらなきゃという使命感から、この2年間何とかつないだ」。満足感は得られなかった。
4回転半を跳ぶイリア・マリニン(米国)が現れても、勝ちたい相手として見ることはできなかった。「年齢なのか、それともネーサンとかゆづくんの存在が、僕の中で大きかったところがあったかもしれない」
3月の世界選手権を最後と決めていたのだろうか。4位に終わった後、「後悔はない」と充実感すら漂わせ、後輩に後を託す言葉が何度も口を突いた。
この12年間の全日本選手権で、頂点に立ったのは羽生さんと宇野だけ。日本男子の一時代が終わろうとしている。
[時事通信社]
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