地盤液状化、対策進まず=識者「ダメージ制御を」―再発の危険も・能登地震
大きく傾いた家屋に、波打つ道路―。能登半島地震では、震度5弱を観測した石川県内灘町などで地盤の液状化が発生し、各地に大きな爪痕を残した。過去の災害でもたびたび起き、再発の危険性も指摘されるが、国の対策は進んでいない。識者は「完全に止めるのは難しいが、ダメージを制御することが大事だ」と話す。
内灘町に住む鍛原節子さん(82)は「玄関の柱が曲がり、ひび割れた地面から水が噴き出てきて恐ろしかった」と発生当時を振り返る。家屋は「目が回って中におれん」というほど傾き、避難所生活を余儀なくされている。自宅前には通学路があるため、「いつ倒れるか分からない」と不安を口にする。
国土交通省の推計によると、石川、富山、新潟の3県で液状化による宅地被害は1万件超。中でも被害が大きかった内灘町の西荒屋地区と室・湖西地区では、応急危険度判定の結果、約4割の家屋が倒壊の恐れがあると判定された。
液状化に詳しい京都大防災研究所の上田恭平准教授は、日本海に面する内灘砂丘から住宅地に向かって地盤が数メートル横滑りした「側方流動」が被害拡大の要因とみている。「震度5弱にしては流動の量が大きい。道路の起伏がここまで生じるのは、熊本地震や東日本大震災でもなかった」と指摘する。
一度液状化した地盤は、理論上は水分量が減って強固になると考えられる。しかし、過去の災害では「再液状化」の事例が確認されており、1799年に起きた金沢地震(マグニチュード6.0)でも、内灘町で液状化の記録があった。
このため国交省は再液状化対策や、危険度が高い地域での事前対策を呼び掛けている。ただ、時間と費用がかかる工事は被害があった地域以外では進んでおらず、予防措置として取り組んだ例はない。
自治体が独自に調査してハザードマップを作成したのは、東日本大震災で液状化被害があった茨城県の3市町にとどまる。国交省の担当者は、被害の正確な予測は難しいとした上で、「行政も住民もハザードマップを活用してほしい」と語った。
[時事通信社]
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