紛争続き「有事の金」に存在感=1万円台定着、若年層も購入―ウクライナ侵攻2年
ウクライナでの終わりの見えない戦争を背景に、安全資産とされる金の価格が歴史的高値圏で推移している。円建てでは、一時1ドル=150円台まで進んだ円安の影響もあって1グラム=1万円台に定着。不測の事態に備えて金を購入する動きは若年層にも広がっており、人気は当分続きそうだ。
2022年2月、ロシア軍がウクライナに侵攻を開始。虚を突かれた市場は、価値が安定し、現金化しやすい金に資産を移す「有事の金買い」で反応した。23年には中東パレスチナでも武力衝突が発生、国際指標のニューヨーク金先物相場は同年12月に1トロイオンス(約31グラム)=2152.3ドルの史上最高値を更新した。
米国の金融引き締めを受けて円が売られたことで、円建ての金価格は一段と高騰。地金商大手の田中貴金属工業(東京)の店頭小売価格(税込み)は、昨年8月に初めて1グラム=1万円を超えた。現在は侵攻開始直前に比べ約4割高い1万700円付近で推移している。
貴金属店では、金の買い取りを依頼する顧客の姿が目立つ。貴金属市場に詳しい森田隆大・森田アソシエイツ代表は、「バブル期に買い込んだ地金や金貨を手放すシニアが多くなっている」と指摘。「終活」を意識する年齢に達し、いったん値上がり益を確定したいようだ。1000円前後に低迷していた1990年代末に比べれば、約10倍もの大幅上昇となっている。
若年層も金に関心を寄せている。田中貴金属では、毎月一定額を買う「純金積み立て」の新規加入者の年代別割合を19年1月と23年4月で比較したところ、20代は3%から7%、30代は11%から13%へとそれぞれ伸長。その後も、合わせて約2割を占める傾向が続いているという。同社は「物価上昇に伴う貨幣価値の下落を感じていたところに、地政学リスクの増大でニーズが高まった」と分析。「老後資金などのためにまとまった量を購入する30代が増えた」(都内貴金属商)との声もあり、高値でも買い意欲は弱まらない。
先行きの不安要因は多い。もしトランプ前米大統領が政権に返り咲けば、ウクライナ支援を巡る西側諸国の協調も予測不能な状態に陥りかねない。余裕資産で再参入機会を狙うシニア投資家もなお多く、関係者は「本格的な『1万円時代』に入った」(同)と口をそろえる。
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