2021-03-25 10:06

感染対策に不安の声=難しい機運醸成―聖火リレー

 五輪開催へ低調な機運を盛り上げたい一方で、新型コロナ対策の徹底は不可欠。矛盾をはらむテーマのバランスをどう取って聖火リレーを運営するか。関係者は頭を悩ませている。
 大会組織委員会は感染対策に基づくリレーの運営指針を16日に公表した。沿道で観覧客の肩が触れ合う状況などを「密集」状態と捉え、広報車からの注意喚起や走行取りやめの予告、最悪の場合は走行中断も検討する。
 これまでのガイドラインに比べて「具体的になった」と評価する声はあるが、対策通りに機能するかは未知数だ。昨年3月に聖火を仙台駅近くで「復興の火」として展示した際は予想以上の人出となり、急きょ中止に追い込まれた。4月にリレーを控える愛知県の担当者は「やってみないと分からない。当日にコントロールできるか不安」。人口が集中する名古屋市内の状況を心配する。
 リレーに対する受け止めで、地域間に温度差もある。島根県は政府や東京都の感染対策が不十分だとして中止検討を表明。鳥取県では運営のために数百人が来県することに反発があり、「なかなか歓迎ムードにはならない」。「セレモニーの内容を知らされないので、(スタッフ配置を)判断できない」と組織委に不満を漏らす自治体担当者も。ある担当者は「盛り上げるより、安全にリレーすることが命題」と言う。
 組織委の武藤敏郎事務総長は「いろんな心配があることは承知している。こういう形で安全に行われるのかと実感が出てくると、理解も違ってくるのではないか」。組織委は聖火リレー開始後、運営面の好事例や課題を他の自治体と共有する方針。47都道府県の先頭を切る福島県の担当者は「各県が検討する材料になると思うので、しっかり努め上げたい」と語った。