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海の温暖化、漁業に大打撃=北上するロブスター漁場―北米沖

2019-06-24 14:38

【ニューヨーク時事】海の水温上昇に伴い、北米沖のロブスターの漁場が北上し、カナダの大西洋側では水揚げ量が倍以上に増えた。一方、米東部ニューヨーク州とコネティカット州に挟まれたロングアイランド湾からはロブスターが9割以上減り、漁業に大打撃を与えている。
◇1日6匹、収入は9割減
「15年前ごろに湾の西側で減り始め、北側や南側でも減っていった」。ロングアイランド湾での漁師歴52年のジョン・ジャーマンさん(72)はこう振り返った。漁師になって以来、約40年間ロブスターを専門に捕ってきたが、激減で売り上げが漁船の運航費を下回るようになり、2008年ごろから別の魚介類を中心に捕るようになった。
今捕れるロブスターは別の魚介類のわなに「偶然」かかったものだけだ。「今は1日に6匹程度捕れるだけ。たいてい誰かにあげてしまう」と話す。ニューヨーク州の自宅の庭には約1200個のロブスター用のわなが積み上げられていた。
米海洋大気局(NOAA)によると、ロングアイランド湾のニューヨーク州側では、14年の水揚げ量は1996年に比べ97.7%減った。かつて数百人いたロブスター漁師の多くはカキ養殖や建設業などに転職し、今でもロブスターを捕っている漁師は十数人に減った。ロブスターの激減でジャーマンさんの収入は90年代に比べ、1割に減った。かつては船2隻と従業員11人を抱えていたが「今は船と自分だけ」という。
◇カナダでは倍増
カナダの大西洋側で捕れるロブスターの水揚げ量は17年は9万7000トンで、96年の4万トンから倍以上に増えた。漁業が盛んな東部ノバスコシア州の17年の海産物輸出額は20億カナダドル(約1600億円)で、12年から倍以上となった。輸出のトップはロブスターだ。同州のコーウェル漁業・養殖相は「ノバスコシアはビジネスや養殖にオープンだ」と、漁業分野全体への投資拡大を訴える。
NOAAによると、世界の海水温は80年以降、10年ごとに平均約0.12度ずつ上昇してきた。一方、米北東部沿岸では世界平均より速いペースで海の温暖化が進んでいるという報告がある。ロブスターは水温が20度を超えると、生息に影響が出るとされる。
メーン大学のウォール教授(動物学)は「ニューヨークなどでは海の水温上昇でロブスターの死ぬ確率が上昇する一方、以前はロブスターにとって水温が低すぎた(カナダに隣接する米北東部)メーン州やカナダでは、温暖化が逆にロブスターに好影響を及ぼした。わずかな上昇でも生息場所に劇的な変化を与える」と指摘する。ロングアイランド湾では殺虫剤による環境汚染や天敵の増加も減少の一因と指摘されている。
一方、海水温上昇でメーン州の生息数も今後減少すると推測する調査もある。ノバスコシア州への投資拡大に取り組む団体の代表を務めるローレル・ブロテンさんは、「気候変動の悪影響が漁業に出ないように監視を続けていく」と強調した。
[時事通信社]

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