中国、ＰＫＯ参加を一転容認　天皇訪中を意識か―９２年江沢民氏来日時・外交文書

　１９９２年の中国の江沢民共産党総書記来日に際し、同氏の同行筋が日本外務省に対し、日本の国連平和維持活動（ＰＫＯ）参加を容認する方針を伝えていたことが明らかになった。外務省が２０日、江氏来日や同年の天皇陛下（現上皇さま）訪中に向けた交渉経過を含む外交文書ファイル１７冊を公開した。（肩書は当時）
　江氏は９２年４月、日中国交正常化２０周年に合わせて公賓として来日した。日中間で焦点となっていた陛下訪中問題の進展が目的で、宮沢喜一首相と会談した際も訪中を要請した。
　当時、日本政府は自衛隊のＰＫＯ参加に向け、国会に提出したＰＫＯ協力法案の早期成立を目指した。それまで中国は戦前・戦中の歴史を踏まえ、日本に慎重な対応を求めてきた経緯がある。このタイミングで容認に転じた背景には、日本の立場に理解を示すことで、訪中に向けた環境整備を図る思惑もあったものとみられる。
　４月６日の来日を受け、外務省が同８日に作成した「ＰＫＯに関する江沢民総書記の発言」と題する文書によると、江氏の同行筋から、(1)中国政府は自衛隊のＰＫＯ参加に反対しない(2)（江氏の発言は）ＰＫＯ枠内での自衛隊の海外派遣と海外派兵を使い分けた(3)国内世論があり、中国政府の立場変更を急には公にできない―との考えが示された。
　外務省も江氏の発言を分析。同７日の講演で「日本がアジアおよび世界の平和を擁護し、積極的な役割を果たすことを支持する」と述べたことに触れ、「ＰＫＯを排除しない形で平和協力一般にわが国の参加を期待する趣旨を明確にしている」との見方を示した。
　江氏は同８日の記者会見では「海外派兵は敏感な問題だ。慎重に対処してほしい」と語ったが、「自衛隊の海外派遣」の賛否には言及しなかった。同文書は、ＰＫＯ参加と海外派兵の区別を「中国側も十分に理解している」と評価。「今次訪日における江氏の発言によって、中国がＰＫＯの枠内での自衛隊の海外派遣について容認する含みのある態度を初めて示した」と分析した。
　別の文書によると、中国側からは「日本の立場を十分に理解しており、ＰＫＯ法案も問題ない」と伝えられた。
　外務省は原則として作成から３０年が経過した外交文書を定期的に公開。東京・麻布台の外交史料館で閲覧できる。（2023/12/20-10:13）

China said in talks related to then Chinese Communist Party leader Jiang Zemin's 1992 visit to Japan that it would tolerate the neighboring country's participation in U.N. peacekeeping operations, according to Japanese diplomatic documents released Wednesday.
   A Chinese official involved in Jiang's visit informed Japan's Foreign Ministry of the policy, at a time when the Japanese government was aiming to enact a bill on cooperation with U.N. peacekeeping operations.
   Previously, Beijing had urged caution over the participation of the Japanese Self-Defense Forces in peacekeeping operations, in view of history before and during World War II.
   The shift to accepting Tokyo's position on peacekeeping cooperation was likely aimed at facilitating the visit to China by then Japanese Emperor Akihito, held in October that year. Jiang's official visit to Japan in April 1992, which coincided with the 20th anniversary of the normalization of diplomatic ties between the two countries, was aimed at advancing negotiations over the Imperial trip.
   During his stay in Japan, Jiang asked then Japanese Prime Minister Kiichi Miyazawa to realize the then Emperor's visit to China.