刑務作業製品に脚光　被害者支援や社会復帰に一役―担当者「理解進んで」

　受刑者が社会復帰を目指して刑務所内で作った製品が、コロナ禍の苦境を経て売り上げを取り戻しつつある。安さと品質の良さに加えて、購入すれば受刑者の更生や犯罪被害者の支援にもつながる。公益財団法人矯正協会の担当者は「認知度が上がって製品への理解が進み、購入者にも『社会貢献している』と思ってもらえれば」と期待している。
　刑務作業製品は、革靴や積み木、みこしなど全国の刑務所で４０００種類以上作られている。いずれも各施設の作業専門官が自ら企画し、受刑者の作業を指導。各地の即売会や矯正展などで一般向けに販売している。
　ここ数年、受刑者の減少などで売り上げが減少傾向にあった中、コロナ禍で矯正展が中止となるなどし、２０２０年度は前年度の半分以下の約３億７０００万円にまで減少。昨年度にようやく約６億円まで回復し、最近は在庫不足で販売制限を設ける製品も出てきた。
　東京都中野区にある常設展示場「キャピックショップなかの」では、動画サイトなどで取り上げられたことがきっかけとなり、今年８月ごろから来客数が増加。週末でも１日１００人ほどだった来客が、多い日は２００人程度まで増えたという。初めて訪れたという墨田区の主婦佐藤裕子さん（６４）は「完成度が高くて感心した」と驚く。中野区の主婦中村明子さん（６０）は当初、子どもに受刑者が作った製品を与えることにためらいがあったというが、品質の良さに「何の抵抗もなくなった」と話す。
　売り上げの一部は犯罪被害者支援団体への助成に充てられる。助成を受ける「被害者が創る条例研究会」世話人の渡辺保さん（７５）は「矯正協会を通して、贖罪（しょくざい）の意味を含めて（助成金を）もらっている」と語る。
　横浜刑務所（横浜市）では、パスタなどの乾麺が好評で、購入者から応援の手紙などが届き、受刑者の意欲にもつながっているという。小山田勝作業専門官は「受刑者の社会復帰には一般の方の理解が必要。製品が社会に浸透することで、その助けになれば」と話した。
　今月９、１０日には東京国際フォーラム（千代田区）で全国矯正展が開催され、製品の展示即売会が行われる。（2023/12/09-13:33）

Sales of products made by prison inmates in Japan are recovering after a slump amid the COVID-19 crisis, promoting their rehabilitation and support to crime victims.
   Such products are cheap and of good quality, consumers say.
   "We hope that those goods' public recognition will improve and that buyers will feel they are making contribution to society," said an official of the Japanese Correctional Association.
   Across the country, inmates produce more than 4,000 kinds of goods, including leather shoes, building blocks and portable shrines, under programs designed by experts at each prison. They are sold to consumers chiefly at dedicated events outside the walls.
   In fiscal 2020, their sales more than halved from the year before to around 370 million yen due mainly to cancelations of sale events amid the pandemic. But they recovered to some 600 million yen in fiscal 2022, which ended last March.