2023.11.03 12:21Nation

定額減税、効果限定的 ばらまき批判も不可避―経済対策

 政府が閣議決定した総合経済対策は、1人当たり計4万円の定額減税と低所得者層向けの7万円の追加支給が目玉だ。必要な財源は計5兆円規模に上るが、公平性を担保した複雑な制度設計が求められるほか、経済効果は限定的との見方もある。対象が幅広い減税や追加給付には、ばらまきとの批判も避けられそうにない。
 政府は「成長の成果を国民に適切に『還元』する」として、来年6月に所得税を3万円、個人住民税を1万円をそれぞれ減税。住民税非課税世帯には7万円を追加で給付する方針だ。一連の還元策について、第一生命経済研究所の星野卓也主任エコノミストは「年に1兆円程度消費を押し上げるとみられるが、(景気を押し上げる)効果は限定的だ」と分析する。
 減税と給付を組み合わせることで、制度設計は複雑さを増す。政府は「両方の支援の間にある者に対しても丁寧に対応する」と強調するが、自民党の税制調査会幹部の間では「本来ならば給付でやるのが筋だ」との意見が多い。
 住民税のみを納税しているため所得税の減税や給付金の対象にならなかったり、所得税を納めていても所得水準がそれほど高くなく、今回の減税の恩恵を十分に受けられなかったりする「隙間」には、約900万人がいると想定される。住民税のみ課税されている世帯にも給付などで支援するが、制度が複雑になれば、企業や自治体の対応もより煩雑なものになり、狙った効果を発揮するまで時間がかかる恐れもある。
 総合経済対策の裏付けとなる補正予算案の一般会計の歳出追加額は13.1兆円とするが、財源の多くは国債の追加発行に依存する可能性が高い。2023年度の累計税収は9月末時点で、前年と比べて2兆円ほど落ち込んでおり、今回の補正予算編成で税収の上振れ分を財源に充てるのは難しいとみられる。
 来年度予算の税収見込みも、計約3兆円台半ばの規模となる定額減税分を差し引いて考える必要があり、その分借金の増大は避けられない。財務省内からは、「誰の目から見ても完全に失策だ」と厳しい見方が出ており、首相肝煎りの還元策の影響は尾を引きそうだ。(2023/11/03-12:21)

2023.11.03 12:21Nation

FOCUS: Impact of Tax Cuts, Cash Benefits Seen Limited


Some experts foresee only a limited economic impact of the Japanese government's comprehensive economic package approved Thursday.
   Featured in the package are 40,000 yen in individual income and residential tax cuts per person and 70,000 yen in fresh benefits for low-income households exempted from residential tax payments, both intended as relief to households hit by rising prices.
   Promising to give back the fruits of economic growth to the people, the government will cut income tax by 30,000 yen per person and 10,000 yen in residential tax in June next year. The 70,000-yen handout may be distributed within this year.
   "While (the measures) are estimated to boost consumption by around 1 trillion yen a year, their impact is expected to be limited," said Takuya Hoshino, an economist at Dai-ichi Life Research Institute Inc.
   The combination of tax cuts and cash benefits makes system design work for the measures complicated.

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