2021.10.04 10:29World eye
地中海の「海藻の森」の復元実験 アルバニア
【ブロラAFP=時事】アルバニア南部にあるブロラ湾の澄み切った海が、太陽の下で輝いている。だが、水面下は砂漠だ。(写真はアルバニア・ドゥラス近郊のカルメットの砂浜)
海中に広がる褐色の海藻の森は、生物多様性に富んだ場所だが、着実に縮小していると科学者は警告する。海温上昇や海洋汚染、さらに爆発物を使う漁によりアドリア海の藻場(もば)は消滅の危機にさらされている。
藻場の減少に危機感を抱いたアルバニアの専門家チームは、実験室育ちの藻類を使って地中海一帯の海藻の森を復元する試みに加わった。
褐藻の一種シストセイラの減少については過去のデータがなく、数値化するのが難しいが、この海藻の群生は多くの生物種にとって重要な生息地や餌場、産卵や子育ての場となっている。
専門家はアドリア海およびそれと接するイオニア海でのシストセイラの消失を憂慮している。
ブロラ大学の生物学者、イナ・ナスト教授は「ここ数年、シストセイラの藻場の急激な減少が目撃されています。最大の影響は、気候変動による温度上昇です」とAFPに語った。
加速する沿岸部の都市化、農業・産業廃水の排出、トロール漁、堆積物汚染、魚の乱獲なども問題だとナスト氏は言う。
■保護種
同じくブロラ大学のディナーダ・ソータ教授は、ダイナマイトや削岩機を使って岩を砕きイシマテガイを取る漁法も藻場を破壊すると指摘する。この貝は保護種だが、アルバニア沿岸の多くのレストランでは今も珍味として扱われている。
科学者がブロラ湾で撮った画像を見ると、むき出しの岩の間を魚がまばらに泳いでいる。そこに住み着いているのはウニだけ。乱獲で天敵が消えたせいで増殖している。
2019年1月以来、同大学の生物学研究室は地中海域にある他の10か所の研究機関と同じ手順で、褐藻を復元させる実験の一端を担っている。
実験室で受精させたシストセイラの細胞を水槽で育て、小さな藻が石に付着したら、それを深さ約4メートルの海中に沈める。
「海底でもあらゆる観察を続けないといけません」とナスト教授は言う。自ら定期的に潜水し、成長を観察している。
数週間後、結果を検討し、藻が定着したかどうか確かめる。この実験を通じて、藻場の復元手順が策定されることが期待されている。
■侵入種
ここ数年、外来種もまた海底の生態系にとって脅威の一つになっている。400キロ以上に及ぶアルバニアの海岸には、多くの外来種が住み着いている。
中でも特筆すべきは、1990年代にオーストラリアから移入された「カウレルパ・シリンドラセア」というイワヅタ属の一種で、生物多様性に不可欠な水中植物ポシドニアの群生を破壊している。
ティラナ大学のサイミール・ベツィライ教授によると、「地中海のできもの」とあだ名されるこの外来種はすでにアルバニア全土の海岸で群生している。
「他の侵入種同様、この水草も在来種と比べて非常に強く、海洋の動植物相を劣化させ、生物多様性を大きく損ねます」と語る。
北部沿岸のカルメットでは、2メートル潜れば、この外来種の群生が見られるという。
■「まるで新型コロナウイルス」
専門家はアルバニアの海中で計40種の動植物侵入種を確認している。例えば紅海由来の魚であるアイゴ。餌になる藻場を食べ尽くす。
科学者はこれを地中海やアドリア海周辺諸国に共通の現象として、各国に共同で対処するよう促している。
「力を合わせ、今すぐ解決法を探しだすべきです」とブロラ在住の生物多様性専門家ネツィプ・イソロカイ氏は進言する。
ブロラで25年以上漁業を営むバーツィ・ドゥルミッチャイさんは、この問題は国境など関係なく広がっている、だから対策も国境を超えて行う必要があると言う。
漁網を破って、取った魚を襲う外来のワタリガニが急速に増殖していると嘆く。「まるで新型コロナウイルスです」と苦笑い。「大国が一緒になってワクチンをつくった。われわれも地球のために同じようにしなければいけません。国境は守ってくれません」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/10/04-10:29)
海中に広がる褐色の海藻の森は、生物多様性に富んだ場所だが、着実に縮小していると科学者は警告する。海温上昇や海洋汚染、さらに爆発物を使う漁によりアドリア海の藻場(もば)は消滅の危機にさらされている。
藻場の減少に危機感を抱いたアルバニアの専門家チームは、実験室育ちの藻類を使って地中海一帯の海藻の森を復元する試みに加わった。
褐藻の一種シストセイラの減少については過去のデータがなく、数値化するのが難しいが、この海藻の群生は多くの生物種にとって重要な生息地や餌場、産卵や子育ての場となっている。
専門家はアドリア海およびそれと接するイオニア海でのシストセイラの消失を憂慮している。
ブロラ大学の生物学者、イナ・ナスト教授は「ここ数年、シストセイラの藻場の急激な減少が目撃されています。最大の影響は、気候変動による温度上昇です」とAFPに語った。
加速する沿岸部の都市化、農業・産業廃水の排出、トロール漁、堆積物汚染、魚の乱獲なども問題だとナスト氏は言う。
■保護種
同じくブロラ大学のディナーダ・ソータ教授は、ダイナマイトや削岩機を使って岩を砕きイシマテガイを取る漁法も藻場を破壊すると指摘する。この貝は保護種だが、アルバニア沿岸の多くのレストランでは今も珍味として扱われている。
科学者がブロラ湾で撮った画像を見ると、むき出しの岩の間を魚がまばらに泳いでいる。そこに住み着いているのはウニだけ。乱獲で天敵が消えたせいで増殖している。
2019年1月以来、同大学の生物学研究室は地中海域にある他の10か所の研究機関と同じ手順で、褐藻を復元させる実験の一端を担っている。
実験室で受精させたシストセイラの細胞を水槽で育て、小さな藻が石に付着したら、それを深さ約4メートルの海中に沈める。
「海底でもあらゆる観察を続けないといけません」とナスト教授は言う。自ら定期的に潜水し、成長を観察している。
数週間後、結果を検討し、藻が定着したかどうか確かめる。この実験を通じて、藻場の復元手順が策定されることが期待されている。
■侵入種
ここ数年、外来種もまた海底の生態系にとって脅威の一つになっている。400キロ以上に及ぶアルバニアの海岸には、多くの外来種が住み着いている。
中でも特筆すべきは、1990年代にオーストラリアから移入された「カウレルパ・シリンドラセア」というイワヅタ属の一種で、生物多様性に不可欠な水中植物ポシドニアの群生を破壊している。
ティラナ大学のサイミール・ベツィライ教授によると、「地中海のできもの」とあだ名されるこの外来種はすでにアルバニア全土の海岸で群生している。
「他の侵入種同様、この水草も在来種と比べて非常に強く、海洋の動植物相を劣化させ、生物多様性を大きく損ねます」と語る。
北部沿岸のカルメットでは、2メートル潜れば、この外来種の群生が見られるという。
■「まるで新型コロナウイルス」
専門家はアルバニアの海中で計40種の動植物侵入種を確認している。例えば紅海由来の魚であるアイゴ。餌になる藻場を食べ尽くす。
科学者はこれを地中海やアドリア海周辺諸国に共通の現象として、各国に共同で対処するよう促している。
「力を合わせ、今すぐ解決法を探しだすべきです」とブロラ在住の生物多様性専門家ネツィプ・イソロカイ氏は進言する。
ブロラで25年以上漁業を営むバーツィ・ドゥルミッチャイさんは、この問題は国境など関係なく広がっている、だから対策も国境を超えて行う必要があると言う。
漁網を破って、取った魚を襲う外来のワタリガニが急速に増殖していると嘆く。「まるで新型コロナウイルスです」と苦笑い。「大国が一緒になってワクチンをつくった。われわれも地球のために同じようにしなければいけません。国境は守ってくれません」【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕(2021/10/04-10:29)
2021.10.04 10:29World eye
Battling to 'replant' Albania's threatened marine forests
In the bay of Vlora on central Albania's coast, crystal clear waters sparkle in the sun but under the surface, it is a desert.
The large brown algae forests -- a hot spot of biodiversity -- are steadily shrinking, scientists warn.
Warming sea temperatures, pollution and dynamite fishing are causing Adriatic marine forests to disappear.
The trend has prompted Albanian experts to join a Mediterranean programme to try to reverse the loss using laboratory-grown versions.
A lack of historical data makes it difficult to quantify the decline of Cystoseira, a genus of brown algae which provides a key habitat for many species, serving as food as well as spawning and nursery areas.
But experts warn its disappearance in both the Adriatic and Ionian seas is worrying.
In recent years we have seen a sharp decline in the marine forests of Cystoseira, the most affected by the increase in temperature caused by climate change, Ina Nasto, a biology professor at Vlora University, told AFP.
Accelerated coastal urbanisation, discharge of agricultural or industrial waste water, trawling, sediment pollution and overfishing also contribute to the problem, she said.
- Protected species -
Practices like harvesting date mussels with dynamite or jackhammers to break the rocks where they live devastate the seabed too, Denada Sota, also a professor at Vlora University, said.
Although they are a protected species, many restaurants on Albania's coast still serve date mussels as a delicacy.
Images shot by scientists in Vlora bay show bare rocks, where fish are few and far between, populated only by sea urchins that proliferate because their natural predators have disappeared as the victims of overfishing.
Since January 2019, professors from the university's biology laboratory have been part of an experiment aimed at restoring the brown algae.
Some 10 other institutes in the Mediterranean region are also participating, applying the same protocol.
It involves the scientists at the Vlora lab growing fertilised Cystoseira algae cells in aquariums.
The tiny algae fix themselves onto stones that are later immersed in the sea at a depth of some four metres (13 feet).
We have to do all the monitoring even at the bottom of the sea, said Nasto, who regularly dives down to inspect the seabed and check on progress.
After a few weeks, the scientists look again to see the results of their experiment and find out if the algae have made a new home.
It is hoped that the experiment will enable them to develop protocols for marine forest restoration.
- Invasive species -
Invasive species pose another threat to the seabed ecosystem -- for several years, Albania's more than 400-kilometre (250-mile) coastline has hosted many non native species.
Chief among them is Caulerpa cylindracea, which has decimated meadows of Posidonia, another seaweed crucial to biodiversity.
Introduced from Australia in the 1990s, Caulerpa -- dubbed the tumour of the Mediterranean -- has already colonised all the Albanian coast, Sajmir Beqiraj, a professor at Tirana University, said.
Like other invasive species, this algae has great advantages to compete with native species and degrade the marine fauna and flora, significantly reducing biodiversity.
In Kallmet, on the northern coast, you only have to dive down two metres to find dense colonies of Caulerpa, he said, showing AFP areas conquered by the invasive seaweed.
In just a few minutes, his bag is half-filled with the dark green algae in the shape of tiny bunches of grapes.
- 'Like Covid' -
Experts have identified a total of 40 invasive plant and animal species in Albanian waters, such as the dusky spinefoot fish from the Red Sea that is devouring algal forests it feeds on.
Since the phenomenon is common to Mediterranean and Adriatic countries, scientists urge a joint approach.
We must join forces and act quickly to find a solution, said Nexhip Hysolokaj, a biodiversity expert from Vlora.
Baci Dyrmishaj, a fisherman for more than 25 years in Vlora, agrees that the problems defy borders -- and so should the response.
He laments the proliferation of the invasive blue crab that destroys his nets and attacks his catch.
It's like Covid, he said smiling. The big countries got together to find a vaccine, we have to do the same for the planet because no border can save you.
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