2025-06-19 17:21World eye

台湾、中国のスパイ・浸透工作への対応強化 軍人・公務員を調査

【台北AFP=時事】中国政府が台湾におけるスパイ活動を強化する中、台湾は潜在的な中国シンパ(支持者)を一掃するため、数十万人の軍人、公立学校の教師ら公務員を対象に調査を実施している。≪写真は台湾の頼清徳総統≫
 中国は台湾を領土の一部だと主張し、武力による併合も辞さない構えを見せており、台湾では中国による浸透工作の規模に対する懸念が高まっている。
 検察は先週、与党・。民主進歩党(民進党)を最近除名された元党員4人(総統府の元職員1人を含む)を、国家機密を中国政府に漏洩(ろうえい)した罪で起訴した。
 台湾と中国は数十年にわたりスパイ合戦を繰り広げてきたが、アナリストたちは、中国による攻撃のリスクを考えると、台湾への脅威はより深刻だと警告している。
 中国による浸透工作の主な標的は、退役軍人や現役軍人で、金銭、脅迫、あるいは親中国思想によって屈服させている。
 台湾の主権を公然と訴え、中国政府に嫌悪されている頼清徳総統は、中国を「境外敵対勢力」と位置づけ、国家安全保障を脅かすとされる中国の活動について、台湾人の意識を高めようと努めている。
 近年、中国スパイとして起訴される人の数が急増していることを受け、台湾政府は省庁、軍、公立学校の内部において、中国政府に忠誠を誓っている疑いのある人物を特定しようとしている。
 公務員が中国の居住許可証などの身分証明書を所持していることが判明した場合、台湾の戸籍、つまり事実上の国籍(市民権)を失うリスクがある。
 民進党の王定宇議員はAFPに対し、「中国がこうした手段を使って台湾国民を強制的に従わせ、公務員制度を中心とする台湾の制度に浸透しようとしているため、(中国の身分証明書の)調査を開始した」「脅威はますます深刻化しており、われわれはこれに対処しなければならない」と語った。
 ■一般市民は調査の対象外
 最近行われた1回目の調査では、調査対象者のほぼ全員に当たる37万1203人が、台湾の法律で禁止されている中国の身分証明書を所持していないことを宣誓する旨を示した文書に署名した。
 台湾の対中政策を担う最高機関である大陸委員会によると、2人が中国の身分証明書を所持していることを認めた。75人は中国の居住許可証を所持していたが、これらは破棄されたという。
 現在2回目の調査が行われているが、台湾政府は一般市民を対象とすることはないとしている。
 昨年、ユーチューブ動画で台湾人が中国の身分証明書を所持している事例が数万件報告されたのを受け、懸念が高まっていた。
 台湾治安当局の高官は、中国が台湾出身者に発行する身分証明書の数が最近増加しているが、中国政府の協力なしにその数を推定したり、違反者を追跡したりすることは「困難」だと説明。
 中国の狙いは、「台湾国民を自国の法的枠組みの下で中国国民として定義すること」だという。
 中央研究院の法学者、蘇?圖氏は、台湾で中国の身分証明書を保有している人物を突き止めるための政府の「調査権限」には限界があると指摘。
 調査対象となった台湾人が自発的に情報を開示しない場合、「政府にできることはあまりない」と述べた。
 ジェームズタウン財団のピーター・マティス理事長はAFPに対し、素性調査はそれでも「潜在的に有益」であり、特に調査対象となった人物が将来、書類について虚偽の申告をしたことが判明した場合にはなおさらだと語った。
 台湾はまた、中国人配偶者とその中国生まれの子ども約1万人対し、中国の戸籍を放棄したことの証明を求めている。これは台湾法で数十年前から義務付けられているものだ。
 これらの通知は政府の強引さを批判する声を呼んだが、王議員は、中国からの「新移民」の一部は中国政府のためにスパイ活動を行い、台湾の選挙に干渉しているため、より厳格な執行が必要だと強調した。【翻訳編集AFPBBNews】

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