2025-04-21 19:19World eye

中国SNSユーザー、対米貿易戦争への怒りをミームで発散

【北京AFP=時事】中国政府が経済力と政治力を駆使してドナルド・トランプ米大統領の貿易戦争に「最後まで」立ち向かう意向を示している一方で、オンラインでは中国のソーシャルメディアの戦士たちがユーモラスなキャンペーンで反撃している。≪写真はソーシャルメディアで拡散しているユーモラスなキャンペーンの動画が表示されたスマートフォン。中国・北京で≫
 トランプ氏の関税攻勢は、米中の激しい報復関税の応酬につながった。両国の対立により、世界的な景気後退への懸念があおられ、市場は急落した。
 トランプ氏は関税政策について、長年にわたり他国に「搾取」されてきたことへの対応であり、製造業を米国に呼び戻し、企業に米国人労働者を雇わせるためのものだと説明している。
 だが、中国のSNSユーザーは、米国人が購入している靴やスマートフォンなど、多くの商品が中国の安価な労働力を利用して製造されていることを強調するミームを人工知能(AI)の力を借りて作成。
 ソーシャルメディアには上から目線の投稿やジョークがあふれ、挑発的な投稿が検索ランキングの上位に入っている。
 ある動画では、中国人ユーザー(37)が、自宅にある物の中に米国製が一切含まれていないことを両手を広げて強調している。
 このユーザーが投稿した米国批判の動画は、動画投稿アプリ「TikTok(ティックトック)」で数千万回再生された。ティックトックは公式には中国国内で利用できないことになっているが、仮想プライベートネットワーク(VPN)を経由すれば見ることができる。
 中国東北部・遼寧省を拠点とするこのユーザーは動画の一つで、「ドナルド・トランプが貿易戦争を始めた。MAGA(米国を再び偉大に)なんてクソくらえだ」と訴えている。
 ■米報道官の服は「中国サイトの商品」
 同ユーザーはAFPにハンドルネーム「Buddhawangwang」を名乗り、こうした投稿は「怒りを発散する」手段だと述べた。
 このユーザーは2019年に米カリフォルニア州に移住したが、「中国に対する偏見」への憤りから4年後にグリーンカード(永住権)を「捨てた」と語った。
 「偏見」には、中国最西端・新疆ウイグル自治区に関する「フェイクニュース」も含まれているという。同自治区では、中国が少数民族ウイグル族に対する広範な人権侵害を行っていると批判されているが、中国政府は否定している。
 同ユーザーは今、「西側諸国のプロパガンダを暴く」ことを目指す自らの行動が正しかったと感じている。
 「世界の工場」として急速に経済大国に発展した中国の多くの人々にとって、米国人が靴やスマホを自国で製造するという考えは滑稽でしかない。
 トランプ氏や、「中国の小作農」発言で非難を浴びたJ・D・バンス米副大統領、米実業家のイーロン・マスク氏が、靴や米アップルの人気スマホ「iPhone(アイフォーン)」の製造ラインで働いているように見せ掛けた生成AI動画は、瞬く間に拡散した。
 米国人が服や靴、電子機器を製造する際、太った作業員が困惑しながらミシンをいじる場面を映した動画もある。
 また、グローバル化の恩恵を享受しながら中国を批判し、偽善的だとされる米当局者の言動も標的となっている。
 ある投稿は、ホワイトハウスのキャロライン・レビット報道官が着ていた服が中国のECサイト「淘宝(タオバオ)」で購入されたものだと指摘。
 「仕事では『メイドインチャイナ』を攻撃、私生活では『メイドインチャイナ』を享受」や「裏表のある行動だ。それなら着るな、使うな」とのコメントが付けられた。
 中国外務省の毛寧報道官は、トランプ氏のトレードマークの「MAGA」帽子に「メイドインチャイナ」という表示があり、値札に値上げ価格が示されている投稿を共有した。
 ■「確かなナショナリズム」
 上海外国語大学でソーシャルメディアと市民社会の言説を研究するグウェン・ブビエ教授はAFPの取材に対し、「ここには確かにナショナリズムがある」と指摘。これらの動画はバンス氏の「小作農」発言に対するタイムリーな反論となっており、「J・D・バンス氏の無礼さ、ひいてはトランプ政権の無礼さをやゆ」していると説明した。
 だが、こうしたユーモアの裏には、米国との貿易戦争が中国の輸出依存型経済に与える影響に対する深い懸念が潜んでいる可能性が高い。
 インターネットを厳しく規制する中国の検閲当局は、貿易戦争による中国の消費者や製造業への影響を警告する主張を削除したようだ。
 中国最大のソーシャルメディア「微博(ウェイボー)」では、「米国は中国製品に104%の関税を課す」というハッシュタグの付いたコメントがすべて削除された。
 一方、米国での卵価格の高騰に言及した「米国は卵を乞いながら貿易戦争を仕掛けている」というハッシュタグは2億3000万回閲覧された。【翻訳編集AFPBBNews】

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