2025-02-18 14:48国際

統治力誇示するハマス=イスラエルは展望描けず―ガザ停戦1カ月

 【カイロ時事】パレスチナ自治区ガザの停戦発効から1カ月。壊滅状態に陥ったガザの再建が難航する中、イスラム組織ハマスは人質解放の「式典」などを通じて内外に統治能力を誇示している。一方、ハマス壊滅を掲げるイスラエルには具体的な目標達成への方策がなく、同国の専門家は、ネタニヤフ政権が今後の展望を打ち出せない「混乱状態に直面している」と語った。
 ◇人質解放は「戦勝集会」
 1月19日に始まったガザの停戦第1段階で、ハマスは6回にわたり拘束する人質を解放した。ハマスは解放のたびに式典を開催。テレビ中継では、整列した大勢のハマス戦闘員が見守る中、ステージ上で赤十字国際委員会(ICRC)要員に身柄を引き渡す手続きが粛々と進められる。あちこちに「勝利」を誇示する言葉が並んだパネルが用意され、「戦勝集会」の様相だ。
 イスラエルや米国は、戦後のガザ統治にハマスが関与することを認めていない。エジプト紙アルアハラムのアシュラフ・アブホウル編集長は、こうした中で式典を行うハマスには「住民の支持や統治能力を失っていないことを知らしめる意図がある」と解説する。
 ◇埋葬「手数料」に住民怒り
 ただ、ハマスのアピールに怒りを募らせる住民も少なくない。家族の多くを殺害されたガザ北部シュジャイヤの女性(50)は電話取材に「(戦時下で)ハマスは住民を守らず、幹部や人質の保護を優先した」と訴えた。荒廃した街中で貴重な資材を使い、ステージまで組んで健在ぶりを強調する様子に、住民より組織の存続を優先する体質が見え隠れする。女性は「ハマスは何を祝っているのか」と声を荒らげた。
 ガザからの情報によると、ハマスは2023年10月のイスラエルとの戦闘開始前と同様、住民から「税金」徴収を開始した。その一例が「墓地手数料」。指定場所に埋葬する際、ハマス関係者が1遺体につき約600シェケル(約2万5000円)を要求する。死者の多くはハマスが引き起こした交戦による犠牲者なだけに、反発は根強い。
 ◇トランプ氏構想「夢物語」
 イスラエル軍情報機関アマンの元パレスチナ部門責任者、ミハイル・ミルシュテイン氏は、イスラエル軍による攻撃で軍事力を低下させたハマスは、現地でなお「支配的権力を持つ」と語る。
 イスラエルは「壊滅という目標と現実の乖離(かいり)」を認識しており、ネタニヤフ首相は停戦後、ハマス壊滅に向けた具体的な道筋について踏み込んで発言できる状態にないと指摘。戦後統治を巡っては、トランプ米大統領のガザ所有構想や、ガザに足場がないパレスチナ自治政府の関与などさまざまな展望が語られるが「どれも夢物語だ」と述べた。
 戦後復興を巡り、サウジアラビアで今週、同国に加え、エジプトとヨルダン、カタールなどが首脳会議を開く。パレスチナ自治政府のアッバス議長も参加する見通しで、ハマスの関与の在り方を含め、現実的な対応をどう打ち出すかが焦点だ。
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 ◇ガザ停戦発効後の動き
1月19日 ガザ停戦合意が発効
      イスラム組織ハマス、人質3人解放
  20日 イスラエル、パレスチナ人90人釈放
  25日 ハマスが4人解放、イスラエル 200人釈放
  27日 イスラエル、ガザ住民の北部帰還を許可
  30日 ハマスが8人解放、イスラエル 110人釈放
2月 1日 ハマスが3人解放、イスラエル 183人釈放
      ガザ最南部ラファの対エジプト境界検問所再開
   4日 トランプ米大統領が「ガザ所有」表明
   8日 ハマスが3人解放、イスラエル 183人釈放
   9日 イスラエル軍が要衝ネツァリム回廊から撤退
  10日 ハマス、人質解放の延期発表
      トランプ氏、ハマスに停戦破棄警告
  11日 イスラエル首相、攻撃再開を警告
  15日 ハマスが3人解放、イスラエル 369人釈放。 
[時事通信社]

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