シリア・識者談話
◇強権化の懸念
末近浩太・立命館大教授(中東地域研究)の話 旧反体制派「シャーム解放機構」(HTS)率いる暫定政府は、国際社会からのテロ組織指定と経済制裁の解除を目指し、迅速かつ慎重に善隣外交を進めている。内政でも最低限の安定を維持しているが、実態としては強権化と(イスラム教スンニ派の戒律を政治的に重視する)イスラム主義の動きが垣間見え、先行きは不透明だ。
アサド旧政権下で制定された憲法を停止したため、暫定政府が何を根拠に物事を判断しているのか極めてあいまいだ。また、3月までの任期を終えた後、誰が権力を握るのか見通しはない。このままの状況が続けば、シリア人の不満は強まるだろう。
強権化の兆候は既にある。反発を受け撤回したが、イスラム色の濃い教育課程を導入しようとしたのもその一つだ。また、軍事部門でも、表向きにはHTS解散と新たな国軍への統合を表明したが、実際には軍事部門の独占を進めている。HTSの外国人元戦闘員も幹部級で登用した。国家の枠組みにとらわれないイスラム主義組織としての思想やネットワークを重視しているものといえる。
こうした動きが見られる中、アサド前大統領が属し、スンニ派とは戒律が異なるイスラム教アラウィ派など少数派の不安は大きいだろう。政権崩壊後、アサド氏支持者と目された人々を取り締まる動きも出ている。戦争犯罪や人道法上の犯罪をどう裁くか法制度が不十分なままでの取り締まりは、国民の対立や分断を引き起こしかねない。アラウィ派というだけで前大統領支持者だとみなされる懸念もある。
[時事通信社]
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