ショルツ政権、分裂の危機=総選挙前倒し観測も―独
【ベルリン時事】ドイツのショルツ左派連立政権が分裂の危機にひんしている。与党3党のうち、特に支持率が悪化している自由民主党(FDP)が存在感を高めようと離脱する可能性が浮上しているためだ。来年度予算案が年内に妥結できるかが政権継続の試金石で、有力紙の南ドイツ新聞は「クリスマス前に崩壊する可能性がある」と指摘。議会が解散され、任期満了に伴う来年9月の連邦議会議員選挙が3月に前倒しされるとの観測を伝えた。
2021年12月に発足したショルツ政権ではこれまでも、財政規律堅持を主張するFDPに対し、福祉拡充を掲げる社会民主党(SPD)と環境を重視する緑の党が財政出動を求めて衝突してきた。総選挙をにらんで各党は独自の主張を強めており、路線対立が修復不能なレベルに達している。
FDPは今年9月の東部3州議選で一つも議席を取れなかった。党勢立て直しを求める声が強まり、党首のリントナー財務相は予算交渉が大詰めを迎える今秋が「決断の秋」になると表明し、離脱をほのめかせた。
これに対して、同じく党勢が傾く緑の党のハーベック副首相兼経済・気候保護相は、10月下旬、FDPの緊縮路線に反する大がかりな経済対策を根回しせずに提案。調整役だったSPD出身のショルツ首相も同29日、財務・経済両相抜きで、自動車大手や労組トップらと経済対策を協議した。
それでもリントナー氏はハーベック氏の提案に真っ向から反対する政策文書を提示するなど折り合う気配がない。「首脳陣は方針を共有できないばかりか、対話もままならない」(フランクフルター・アルゲマイネ紙)状態に陥っている。
公共放送ARDが10月31日に公表した世論調査では、政権支持率が14%と最低を更新。回答者の54%が前倒し選挙を望んだ。支持率首位の中道右派キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)は「この政府はもはや機能していない」(メルツCDU党首)と早期退陣を求めた。
ただ、首相が前倒し選挙に打って出たとしても勝ち目は薄い。米大統領選で欧州防衛に消極的なトランプ前大統領が返り咲いた場合は、危機対応が優先され、連立継続に傾くとの見方もある。
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