スト長期化、深まる混迷=日本企業に影響波及―米ボーイング
【ニューヨーク時事】米航空機大手ボーイングが、労働組合によるストライキ収束のめどが立たず混迷を深めている。労組は経営側が示した4年間で35%の賃上げ案を拒否。一層の経営悪化は不可避の情勢だ。機体生産を担う日本企業を含むサプライチェーン(供給網)にも暗い影を落とす。
経営側と労組執行部は9月上旬、4年間で25%の賃上げを柱とした労働協約の締結で暫定合意した。だが、約3万3000人が加入する組合は物価上昇を十分に反映していないとして協約を却下。9月中旬から複数工場で16年ぶりとなるストに踏み切った。
大型機「777」などの生産に支障が出ており、経営側は事態打開に向け、35%の賃上げを再提案した。しかし、組合は今月23日の投票で改めて否決。混乱収拾の見通しが立たない状況だ。
スト長期化で日本企業にも打撃が及びかねない。機体胴体を手掛ける川崎重工業は生産ペースを落としているといい、「動向を見守るしかない」(関係者)と困惑気味。ボーイングの機体受注残高は9月末時点で5400機に上り、生産の停滞が続けば、航空各社は運航計画の見直しを余儀なくされるなど、影響はさらに広がりそうだ。
ボーイングの経営はストに加え、飛行中の機体の壁が吹き飛んだ品質問題もあり、悪化に歯止めがかからない。2024年7~9月期は61億7400万ドル(約9400億円)の巨額赤字を計上。立て直しに向け全従業員の1割に当たる1万7000人の削減を決めたほか、宇宙部門の一部売却も取り沙汰されている。
米国では来月5日に大統領選を控え、労組票を狙う民主、共和両党が労働者に寄り添う姿勢を競い合う中、今月には港湾労働者がストに踏み切るなど労働争議が活発化。米国野村証券の雨宮愛知シニアエコノミストは「インフレに対して賃金上昇が出遅れた産業では(ストの流れが)しばらく続く」と予想している。
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