一貫黙秘、動機解明焦点=大量のガソリン、どこで―官邸突入、26日で発生1週間
自民党本部と首相官邸が相次ぎ襲撃された事件は26日で発生から1週間。職業不詳臼田敦伸容疑者(49)は黙秘を貫くが、事件で使った車にはガソリンが大量に積まれるなど、強い攻撃性や計画性が垣間見える。警視庁は衆院選の真っただ中、日本政治の中枢を狙った事件の背景や動機の解明を急いでいる。
◇「暴れる力で社会を」
「政権の原発政策や選挙の供託金に不満が募っていたと思う」。かつて政治活動にのめり込んでいた臼田容疑者について、同居する父親(79)はこう振り返った。
父親らによると、臼田容疑者は東日本大震災を機に反原発運動に熱心に取り組んだ。福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働ではテントを張り、泊まり込みで抗議活動に参加。ある知人は「自分の問題として時間とお金を惜しまなかった」と話す。
2009年の衆院選では、供託金減額を掲げて出馬を模索したが供託金が用意できず断念した。
政治活動はここ数年控えていたが、臼田容疑者のものとみられるX(旧ツイッター)には昨年3月まで「暴れる力で社会を変えよう」「法より大切なものがある」などといった投稿が相次いでいた。
◇ガソリン入りタンク16個
臼田容疑者が使用した軽自動車から押収されたポリタンク16個には、数十リットル以上のガソリンが入っていたとみられる。官邸前の車両侵入阻止用の柵に車で突入後、車内で火をつけたが、警察官に拳銃を向けられ投降した。ある警察幹部は「ガソリンに引火していれば大変なことになっていた」と話す。
ただ、臼田容疑者がどのように大量のガソリンを集めたかは判然としない。19年の京都アニメーション放火事件を受け、ガソリンスタンドでは携行缶への販売時に本人確認や販売記録の作成などが義務付けられた。だが臼田容疑者がポリタンクでガソリンを購入したり、車に給油したガソリンをポリタンクに移したりした形跡は確認されていない。
臼田容疑者は、自民党本部前で火炎瓶のようなものを約5本投げ込み、車からは着火剤を取り付けたガソリン入りの瓶も見つかった。警視庁は火炎瓶処罰法違反などでの立件も視野に入れ、押収したパソコンの分析を急ぐとともに火炎瓶の入手、製造方法や動機の解明を進める。
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