「抱きつかれ、尻触られる」=「票ハラ」経験、4人に1人―女性候補者苦悩深く【24衆院選】
女性候補者の選挙では、投票をちらつかせた有権者からセクハラなどを受ける「票ハラ」が後を絶たない。内閣府が2021年度に行った調査では、女性候補者の4人に1人に当たる24.9%が「選挙期間中にセクハラを受けた」と回答。衆院選には過去最多の314人の女性が立候補したが、票ハラは女性の政界進出を阻む一因とされ、問題は深刻だ。
「毎日のようにさまざまな男性から抱きつかれ、尻を触られた」。東京都町田市の東友美市議(40)は初当選した6年前の統一地方選をそう振り返った。「握手の数が票になる」との思いで臨み、多くの人に握手を求めた際に触られたという。「周囲に被害を訴えても、一瞬の出来事で防ぐことができずに繰り返され、つらかった」と語った。
SNSでは「付き合っている人はいるか?」などのメッセージが繰り返し届いた。高齢の男性支援者と二人きりになると、「お前と2人でいれば子どもができるな」と言われたこともあるという。
武蔵野市の酒向萌実市議(30)は「街頭で差し出したビラを受け取らず、舌でなめた男性がいた」と話した。「結婚はまだなのか」「子どもはいるの」などと声を掛けられるたび、うんざりしたという。
こういった声掛けをするのは男性に限らなかった。中年女性から「若いのだから選挙に出るより子どもを産む方が社会貢献になる」と言われ、心が折れるような感覚を覚えたこともある。酒向市議は「誰に相談すれば良いか分からなかった」と嘆く。
有権者による候補者へのハラスメントを防止するため、「女性の政治参画を促す改正推進法」が21年に成立したが、政党などに対策を講じるよう求めるもので、票ハラ行為そのものを禁じたり、罰したりする規定はない。地方議会で根絶条例を制定する動きもあるが、都道府県で制定したのは福岡県と大阪府にとどまっている。
一般社団法人「日本ハラスメント協会」(大阪市西区)代表理事の村嵜要さんは「有権者は優越的な立場から自分の理想を候補者に伝える傾向があるが、身体的・心理的な距離は両者の間で適切に保たれるべきだ」と強調。「候補者の安全を守ることに特化した法律を早急に制定するべきだ」と訴えた。
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