セーヌ川、全てを映す開会式=華やかさ、国情、生活―花の都、熱狂間近・パリ五輪(上)
【パリ時事】パリ五輪の開幕まで19日であと1週間。花の都と呼ばれるパリは、五輪開幕間近の雰囲気になってきた。
夏季大会で初めて競技場外で行われるセーヌ川での開会式。川の両岸や橋に仮設のスタンドが設置されるなど準備はほぼ整った。セーヌ川の開会式は最大の目玉になると同時にパリ、そしてフランスを映し出す
◇フランスを演出
パリの華やかさが詰まったセーヌ川での開会式は現地時間の26日午後7時半(日本時間27日午前2時半)から始まる。夕日など自然光で式典が最もきれいに見えるよう実施時間を調整した。大会組織委員会のエスタンゲ会長は「最高に美しい方法で開催できることをうれしく思う」。見せ方への強いこだわりはフランスならではだ。
選手たちは船に乗って“入場”する。オステルリッツ橋を出て最初に見えるのがノートルダム大聖堂。火災から再建中だが尖塔(せんとう)は復活した。続いてルーブル美術館が姿を現し、街の中心、コンコルド広場、1900年パリ万博の際に建てられたグラン・パレの脇を通過する。
交通の要所、アレクサンドル3世橋をくぐると、五輪マークが着いたエッフェル塔の姿が徐々に大きくなってくる。その麓にあるイエナ橋が終着点。約6キロの船上パレードのコースにはパリの名所が並び、芸術、歴史、文化を存分に感じられる「演出」が施されている。
式典はエッフェル塔の前にあるトロカデロ広場で実施される。開会式には当日30万人を超す観客が見込まれ、約4万5000人が警備に当たる。屋外での開会式を巡っては、テロの危険など安全面が不安視され、代替会場案を求める声も根強かった。その背景には、この国が抱える問題が見て取れる。
◇透ける国情
移民の多いフランスは、イスラム圏で発生する内戦などが国内の治安に影響を及ぼす。実際にイスラム過激派によるテロが起こり、国内のテロ警戒レベルは最大まで引き上げられた。デモや抗議活動も活発で、不法滞在者による犯罪も少なくない。華やかなイメージとは裏腹に、危険と常に隣り合わせにある国情が透けて見える。
セーヌ川は大会中、オープンウオーター、トライアスロンのスイムの会場として予定されている。だが、雨が降れば汚水が排水溝などからあふれて川に流れ込み、水質が悪化。競技実施に不安は残ったままだ。パリの古い街並みには歴史的な魅力が多くある一方、インフラや生活基盤などの古さから生じる問題もある。水質問題もその一例だ。
◇競技実施の意味
フランスでは今月上旬に総選挙の決選投票が行われ、五輪が迫る中でも話題が選挙一色になったほど国民の政治への関心が強い。五輪も、ただ開催を歓迎するわけではない。公的資金が使われる以上、大会を通じて何が残り、どう自分たちのためになるかを重視する。
パリ市はセーヌ川の水質改善へ多くの資金を投入してきた。5月には汚水流入防止のための貯水施設が完成。イダルゴ市長は「これで泳げるようになる」と自信を見せた。五輪の開催により浄化事業が加速した面もあった。その成果はどうなのか。競技実施の可否は重要な意味も持つ。
パリやフランスのさまざまな「顔」を映し出すセーヌ川が、間もなく世界中の注目を集める。
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