欧州委員長、続投に不安要素=親EU派過半数も極右伸長
【ブリュッセル時事】欧州連合(EU)欧州議会選挙(定数720)は、欧州統合を進める親EU派が過半数を確保する見通しとなり、今後は次期欧州委員長人事に焦点が移る。フォンデアライエン委員長は続投に意欲を見せるが、極右・右派が事前予想には届かなかったものの議席を伸ばしたことで、その実現には不安要素も残る。
「極めて誇らしい」。AFP通信によると、イタリアのメローニ首相は記者団に、暫定開票結果に満足の意を示した。メローニ氏率いる極右政党「イタリアの同胞」は、同国内で「第1党」に躍進する見込み。同党が参加する議会右派「欧州保守改革(ECR)」に他の極右会派などを加えると、約150議席と無視できない勢力になるとの予測も出ている。
欧州諸国では、ロシアによる侵攻が3年目に入ったウクライナへの「支援疲れ」が広がり、移民流入や物価高に対する不満も渦巻く。また、EUが世界をけん引してきた環境政策を巡り、厳しい規制に農家が反発。怒りの矛先が「エリート政治」に向かい、極右伸長につながった面もある。
それでも議会選では、最大会派の中道右派「欧州人民党(EPP)」が議席を上積みし、「安定の要」(フォンデアライエン氏)であることを示した。中道左派や中道と合わせれば、親EU派が400議席前後と過半数を確保するもようだ。
次期欧州委員長は、EUの各国首脳が選挙結果を踏まえて候補者を指名し、議会が多数決で承認する仕組み。今回の結果は、フォンデアライエン氏の再選を掲げるEPPにとって有利と言えるが、同氏は2019年の前回選挙後、支持を取り付けたEPPと中道左派、中道の一部議員が「造反」し、辛うじて承認された苦い経験がある。
米政治専門メディアのポリティコ欧州版は、専門家などの話として、今回も支持会派議員の10%超がフォンデアライエン氏の承認採決で「反対または棄権」に回る可能性があると指摘。承認を確実なものとするには、さらなる「仲間が必要」(英紙)と伝えられる。
フォンデアライエン氏は選挙戦で、メローニ氏を「明らかに親EU派」と評価。再選に向けECRの支持取り付けを目指し、メローニ氏が「キングメーカー」(欧州各メディア)になるとの観測もくすぶる。だが、右派への接近は従来の親EU勢力の結束を危うくしかねないだけに、EPPは難しい判断を迫られそうだ。
[時事通信社]
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