パリダカにささげた人生=ぶれず48歳で初制覇―篠塚さん
「世界一過酷」と称されたパリ・ダカール・ラリー(通称パリダカ)は、篠塚建次郎さんにとって人生そのものだった。
37歳だった1986年の初参戦から2002年までは三菱車で参戦。同ラリーは年末年始を含む1月の開催が基本。ほぼ毎回、ゴールになっていたセネガル・ダカールの湖畔にたどり着くと、「今年も完走できた」と胸をなで下ろした。準備期間を含めた1年間の苦労が頭をよぎると同時に、翌年の奮闘を誓う。その繰り返しだった。
三菱自動車の社員ドライバーとしてパリダカに出場し続けた。プロ契約ドライバーではなく、「サラリーマンだったから世界一になれた」と言った。初優勝した97年はアフリカ大陸のみで実施。初挑戦から12年目だった。著書の中で「僕はいつの間にか48歳になっていた。あれほど焦がれていた優勝の二文字だが、自分が案外冷静なことに驚いていた。パジェロの上に乗り、優勝のシャンパンを振りまきながら、青い空の向こうを眺めていた」と当時を振り返っている。
90年代、ダカールのゴール地点で取材機会があった。砂漠の悪路を2週間走り抜けたベテランドライバーは疲れ果てていただろう。それでも日本から訪れた若い記者を、飲み物を振る舞って歓迎した。大好きな仕事に人生を懸けるスポーツマンシップの塊のようなドライバー。その真っすぐな生き方が、駆け出し記者の脳裏に刻まれた。
「ハンドルを握っているときは幸せ。15日ぐらいあるパリダカに集中していられるのは本当に幸せだ」と話していた篠塚さん。アフリカの大地を、パジェロでドライブしていた勇姿が思い起こされる。(時事)
[時事通信社]
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