2023-11-19 14:19国際

ガザ南部「どこへ逃げれば」=イスラエル軍、攻撃拡大を示唆

 【エルサレム時事】「どこへ逃げればいいのか」。イスラエル軍がイスラム組織ハマスとの激戦が続くパレスチナ自治区ガザの北部に続き、ガザ南部へ地上侵攻を拡大させるとの見通しが強まっている。安全な避難先がほとんどない中、行き場を失いつつあるガザ南部の住民には、絶望と怒りが広がっている。
 ◇「大惨事」再来か
 「無差別の爆撃が激しく、至る所に遺体がある。人が毎日死んでいく」。18日に時事通信の電話取材に応じた医師のムスタファ・カハロトさん(56)は、惨状を嘆く。ガザ北部で勤務していた病院を10日に離れ、南部デイルアルバラハへ退避してきた。現在勤める病院は40床だったが、次々と搬送される負傷者に対応しきれず510床に。それでも医薬品が足りず、命を救えそうな負傷者しか治療できない。
 イスラエル軍はガザ侵攻に当たって、住民に退避を促すビラや携帯電話のメッセージを送り、戦闘を一時休止して複数の「回廊」を設けるなど、人道的配慮の姿勢を見せてきた。しかし、カハロトさんは「もはや北部にも南部にも、ガザに安全な場所などない」と吐き捨てるように話す。
 「ガザの住民を(ガザと接するエジプト東部)シナイ半島へ追い出すために、イスラエルが手を尽くそうとしていることは、大半のパレスチナ人が分かっている。ガザに人がいなくなるまで攻撃するのでは」。1948年のイスラエル建国に際し、70万人以上のパレスチナ人が故郷を追われた「ナクバ(大惨事)」の再来という悪夢が頭をよぎる。それでも、カハロトさんは「それは許さない。私たちは自分の土地で死ぬからだ」と力を込めた。
 ◇退避先も空爆
 ガザ南部ラファに住むヤセル・アブサリムさん(37)も、イスラエル軍の空爆におびえる日々を過ごす。「どこも爆撃にさらされ、自分や家族を守るためにどうすればいいのか、どこに行くべきか分からない」。言葉には怒りと焦りがにじむ。
 「イスラエルはガザ南部へ逃げろと脅しながら、今は南部を空爆している。今度はもっと南西にあるラファへ行かせようとするのだろうか」と不安を募らせるアブサリムさん。「神のおぼしめしだから死ぬのは怖くない」と話しつつも、「パレスチナの大義」を掲げてきたはずのアラブ諸国が停戦に向けた有効な方策を示せない現状に「失望した」と憤りをあらわにした。 
[時事通信社]

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