岸田首相、苦心の融和演出=処理水・尖閣、隔たり大きく―米中にらみ安定優先
【サンフランシスコ時事】岸田文雄首相は中国の習近平国家主席との1年ぶりの会談で、懸案を抱えても共通利益の追求を優先する「戦略的互恵関係」を再確認した。東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を受けた日本産水産物禁輸など、個別懸案では成果が乏しく、関係安定化へ融和ムードの演出を優先せざるを得ない苦心がにじんだ。
会談は16日(日本時間17日)、中国側が滞在するホテルに首相が出向く形で行われた。両国の国旗の前で習氏が首相を出迎え、握手を交わした。
冒頭、首相は「日中は隣国として共存、繁栄し、地域と国際社会をリードする大国として世界の平和と繁栄に貢献していく責任を有する」と呼び掛けた。
会談の中で、首相は水産物禁輸の解除を求めたが、双方の主張は平行線だった。習氏は処理水について「福島の核汚染水」という中国側の呼称を用い、善処すべきは日本の側だと指摘。首相は中国当局にスパイ容疑で拘束された邦人の解放や、中国が沖縄・尖閣諸島周辺の排他的経済水域(EEZ)内に設置した海上ブイの撤去を求めたが、習氏の反応は「従来通り」(外務省関係者)のものだった。
戦略的互恵関係は2006年に当時の安倍晋三首相と胡錦濤国家主席が合意したものだが、その後、尖閣諸島の国有化などで対立が激化するにつれて日本側ではあまり使用されなくなってきた経緯がある。
そんな中、互恵関係の再確認を求める習氏の呼び掛けに首相が応じたのは、日中関係が対立一辺倒に陥るのを回避するためだ。15日にはバイデン米大統領が習氏と会談し、軍高官の対話再開など緊張緩和を演出。「準同盟国」として対中けん制で足並みをそろえているオーストラリアは、アルバニージー首相が11月に訪中し、関係改善に意欲を見せた。「他国は中国と関係修復したのに、日本だけが取り残される」(日本政府関係者)ことへの危惧もあった。
日本側は、中国にも日本を取り込むメリットがあるとにらんだ。中国の景気は不透明感があり、日本からの投資を増やし、「米国との交渉を優位に進めたいのではないか」(同)との見方からだ。ただ、会談の開催が正式に決まったのは開始数時間前で、日本政府内では「何をやっているんだ」と直前まで焦りの声も漏れた。
処理水に関しては、科学の専門家による対話を行うことで一致するなど、一歩前進した部分もあった。ただ、会談同席者は「これで解決が見えたわけではない」と慎重だ。松野博一官房長官は17日の記者会見で、「今後の見通しを述べたものだ」と述べるにとどめ、協議の枠組みなど具体論は未定であることを認めた。
[時事通信社]
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