2023-09-22 16:00World eye

ウクライナ領土防衛隊の報道官になった米トランス女性

【キーウAFP=時事】米ネバダ州出身のトランス女性、サラ・アシュトンシリロ氏(46)は2022年3月、難民取材のためウクライナを訪れた。滞在予定は2週間だった。≪写真は米国出身でウクライナの領土防衛隊の報道官を務めるトランス女性のサラ・アシュトンシリロ氏≫
 しかし、滞在予定期間が過ぎてもアシュトンシリロ氏はウクライナにとどまり、同国軍で戦った後、侵攻について英語で発信する領土防衛隊の報道官の任に就いた。
 ウクライナ軍は20日、アシュトンシリロ氏を停職処分にしたと明らかにした。大統領府が承認していない発言があったためとしている。
 アシュトンシリロ氏は停職前の今月上旬、自身が管理するキーウのスタジオでAFPの取材に応じた。所属していた部隊の合言葉は「ロシア人の憎しみを受け入れる」だったと笑顔で語った。
 金髪のアシュトンシリロ氏はカーキ色のポロシャツに身を包み、「ロシア人がわれわれに憤慨しているのなら、自分たちの役目を果たせているということだ」と話した。
 ロシアのテレビ番組は今月、アシュトンシリロ氏を特集した1時間番組を放映した。番組内で同氏は「ウクライナ国民に対するひどい恥辱」や「怪物」と呼ばれた。
 アシュトンシリロ氏はジャーナリズムと研究に携わった経歴を持つ。ウクライナには当初は2週間の滞在予定だった。しかし、1年7か月が過ぎた今、キーウのスタジオからユーチューブで「ウクライナを知る」「ロシアは真実を憎む」といった番組を生配信している。
 ウクライナ語は話せず、英語で政府の声明を伝えたり、ロシアメディアの報道をあざけったりしている。
 ユーチューブの8月の視聴者数は約2万人だった。だが、ロシアのメディアがアシュトンシリロ氏に向ける怒りの度合いはそれとは比べ物にならないぐらい激しいものだ。
 「定期的にグーグルでトレンドを見ていると、私がしばしば上位に登場する。そのトラフィックの大半がロシアからだ」
 ■反応はさまざま
 アシュトンシリロ氏に対するウクライナ市民の反応はさまざまだ。中には「私という人間のある側面が、ウクライナ社会に受け入れられているのか」と尋ねてくる人もいると話した。
 ウクライナは最近では、LGTBQ(性的少数者)に対して寛容になっている。ゲイパレードが開催され、軍は性的少数者の入隊も認めている。
 アシュトンシリロ氏はウクライナ到着後、東部ハルキウ州で取材や市民活動をしていた。
 ハルキウ州の大部分はロシアの占領下となり、頻繁にミサイルで攻撃されるようになった。
 「戦争犯罪やロシアによるテロ行為を間近で目撃したことによって、中立的な観察者だった私が、戦闘員になることになった」「兵士として、そして体制内からできることがもっとあると感じた」
 クリミアのイスラム系少数民族クリミア・タタール人部隊へ入隊し、衛生兵となった。コールサイン「ブロンド」として、戦闘に参加することもあった。
 アシュトンシリロ氏は、すぐにロシアに目を付けられた。
 ロシアは今年に入ってからアシュトンシリロ氏への攻撃を強めたという。
 「私が前線にいると分かると、ロシアは私のいる部隊を積極的に探すようになった」と話した。
 軍はアシュトンシリロ氏に前線から離れるよう命じ、広報部門で働くよう提案してきた。初めは気が進まなかった。仲間を置き去りにすることに罪悪感があったのだ。
 「私はキーウに来たくなかった。100%嫌だった。東部の部隊にとどまりたかった」と語った。
 「だが、われわれの現在の任務は、情報戦を遂行することだ」【翻訳編集AFPBBNews】

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