2023-06-09 16:40World eye

ワインの原材料開示義務化、電子表示めぐり論争 EU

【パリAFP=時事】欧州のワイン業界がついに原材料の開示を迫られている。ただし、ラベルへの表示ではなく、ウェブサイト上での公開が主流となる可能性がある。一方、環境保護団体はそうした開示方法に不満を示している。≪写真はフランスのスーパーで販売されるワイン≫
 ワインには、味やアルコール度数、色などを調整するためにさまざまな添加物が付加されている。そうした添加物は、亜硫酸塩や砂糖、卵白、魚の浮き袋や豚や牛由来のゼラチン、化学物質まで多岐にわたる。
 欧州連合(EU)の食品・飲料業界の大半は、原材料や栄養成分に関する情報の開示を義務付けられているが、アルコール業界は長い間、特例として除外されてきた。
 欧州委員会は2017年、この例外規程に「客観的な根拠」はないと結論付け、新たな規則が発効する今年12月8日以降、ワイン業界にも原材料の開示が義務付けられることになった。
 ただしワインメーカーには、開示方法を独自に設定することが認められた。そのため、瓶上のラベルには引き続き原材料を表示せず、ウェブサイトへアクセスするためのQRコードのみを記載し、詳細はサイトのみで公開することも可能となる。
 だが、有機食品関連団体「オーガニック業界透明性協会(TOWA)」は、これでは意味がないと批判している。
 同協会のオリビエ・ポールモランディニ氏は「スーパーでスマートフォンを取り出し、QRコードを幾つも読み取って添加物を比較し、それをすべて覚えておいてワインを選ぶ自分の姿を想像できるだろうか」と疑問を呈す。
 これに対し業界団体は、ワインは他の食品と同じようには扱えないと反論している。
 「ワインはレシピに従っているわけではない。ブドウは日照や気候条件によって変わる。このため、成分は毎年違ってくる」と語るのは、ベルギー・ブリュッセルに本部を置き、大多数のメーカーが加盟する生産者団体CEEVのイニャシオ・サンチェズ・レカルテ氏だ。
 CEEVは、原材料の電子表示こそがEUの全ワイン生産者を枠組みに取り込むための唯一の現実的な方策だと主張する。
 レカルテ氏は、「取引に支障を来さない方法で情報を伝えるため、ある程度の柔軟性を確保する必要性を欧州委員会は理解してくれた」と述べた。
 ■原材料だけでなくその「影響」も開示を
 だがTOWAは、電子表示の容認は、EUが重視する農業の環境負荷削減の取り組みに反すると批判する。
 さらにオーガニックワインやナチュラル(自然派)ワイン生産者は、ラベル上の表示にとどまらずQRコードを必要とするワインは、恐らく避けた方がいいワインだとまでいう。
 フランス中部ブルゴーニュの有名なナチュラルワイン醸造家、ジュリアン・ギヨ氏は「ワインにほとんど添加物を足さないオーガニックワインならばラベルの表示で事足りるだろうが、一般的なワインでは辞書が要るほどになるだろう。だからQRコードが必要だというのだ」と述べた。
 TOWAはまた、QRコードと電子表示は農薬や化学肥料を使用する従来型の農家を利するシステムだと指摘する。
 ポールモランディニ氏は「土壌や水、環境の汚染、健康への悪影響といった代償を払うのは消費者や社会」である以上、「必要なのは単に原材料のリストだけではない。従来型農業が及ぼすあらゆる影響とその規模の一覧があってしかるべきだ」と訴えた。【翻訳編集AFPBBNews】

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