「なぜ」問い続けた被害者=本音聞けず、死刑執行で区切り―秋葉原無差別殺傷15年
東京・秋葉原の歩行者天国で17人が殺傷された事件は、8日で発生から15年となった。右脇腹を刺され、重傷を負った元タクシー運転手の湯浅洋さん(69)は「なぜ事件を起こしたのか知りたい」との一心で加藤智大元死刑囚=執行時(39)=に手紙を送り続けたが、納得のいく返答は得られぬまま、昨年7月に刑が執行された。「本音を聞きたかった」と悔やみつつ、気持ちに区切りをつけ、静かな生活を送っている。
事件当日、仕事で秋葉原を通りがかった湯浅さんは、被害者を助けようとしたところを背後から刺され、意識不明となった。一命を取り留めたものの、手足のしびれなど後遺症が残り、何度も仕事を変えることに。今も痛み止めの服用が欠かせないという。
事件から1年ほどたったころ、湯浅さんの自宅に元死刑囚から手紙が届いた。6枚の便箋にはしっかりとした文章で謝罪がつづられており、「なぜこの子が社会に適応できず、事件を起こしたのだろう」と疑問が湧いた。手紙には「すべてを説明したい」との文言もあり、湯浅さんは「それを期待して手紙を出し始めた」と振り返る。
これまでに元死刑囚に宛てた手紙は計7通。自身の近況や元死刑囚の手記の感想などを交え、「君が反省を表す姿を見ながら、一緒に事件を考えたい」「もっと君を見せてくれませんか」などと訴えた。面会を求めて何度も拘置所に足を運んだがかなわず、元死刑囚からは面会を拒否したことへの謝罪が一通送られてきただけだった。
事件後、秋葉原には多くの防犯カメラが設置された。だが湯浅さんは「加藤のような覚悟を持った人間の犯行は止められない。なぜ事件を起こしたのか、きちんと調べて残さなければまた同じ事件が起きる」と懸念する。
近年も無差別殺傷事件や他人を巻き添えにする「拡大自殺」は後を絶たない。湯浅さんは「(それぞれの容疑者は)疎外感から事件を起こした」と考える一方、「人間性はみんな違う。だから加藤の本音を聞きたかった」と無念さをにじませた。
息子や娘と同世代の元死刑囚に対し、親心に似た感情を抱いていたという湯浅さん。数年前から暮らす故郷の宮崎市では「将来、事件を起こそうという考えを持つことがなくなればいい」との思いから、近所の子どもたちに積極的に声を掛けている。最後に秋葉原の現場を訪れたのは、事件から10年となった日。「加藤本人がいなくなり、どうやって事件を解明していくか。もう終わったような感覚です」と静かに語った。
[時事通信社]
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