2023-06-05 04:18

牛の肉質、AIが事前評価=コスト低減、競争力強化へ―福島

 福島県は、帯広畜産大などと共同で、人工知能(AI)技術により牛の肉質を生育段階から評価できるシステムを開発した。通常は出荷、解体後に脂肪の入り方(サシ)や色などで判定されるが、事前に高い精度で評価できれば出荷のタイミングの判断やコスト削減に役立つ。県農業総合センター畜産研究所の原恵さんは「震災で弱った県産牛の競争力を強化したい」と意気込んでいる。
 牛肉は、1頭から取れる肉の量と肉質で等級付けされる。これまでも、より良い肉質で市場に出すため、出荷前の牛に超音波を当てて状態を見ることはあったが、「判断するのは人。経験が必要で個人差がかなりある」(原さん)という。
 県などは2019年にシステム開発に着手した。生後22~24カ月の牛について、AIに背から腹にかけての超音波画像を年間約1500頭分学習させ、現状の肉質や将来の「伸びしろ」などを評価。畜産農家はこの評価を参考に、伸びしろが少なければ早期出荷して飼料代削減や牛舎の回転率向上につなげたり、評価が高ければ品評会に向け準備したりできるという。
 同県伊達市の肥育農家、狗飼功さん(73)は、「AIは目利きがうまい人と同じだ」と信頼を寄せる。「(子牛を)買った順番で出荷するだけだった」が、システム導入で「データを見て順番を入れ替えて出すといった工夫ができる」と話す。
 11年の東京電力福島第1原発事故以降、県産牛の価格は伸び悩んでいる。県畜産課によると、事故直後に全国平均と1キロ当たり300円ほどあった取引価格の差は徐々に縮小したものの、今年1月時点でもなお約90円安い。「震災前水準に戻ったとは言いがたい」状況だ。
 飼料や物価の高騰で、子牛の仕入れ価格など生産コストは上昇し、産地間競争も激化している。原さんは「安定して高品質の牛をそろえることと、品評会で入選を多く出すことがブランド力向上のカギになる」と指摘。「実際の評価をAIに再学習させながら、システムの精度を上げていきたい」と力を込める。 
[時事通信社]

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