魅力は「何も起きない」こと、超スローなヘラジカ番組 スウェーデン
【ストックホルムAFP=時事】3頭のヘラジカがおずおずと湖に近づくと、ストリーミング映像にコメントが殺到する。「行け!」「飛び込むんだ!」「かわいい!」。やがて、ヘラジカは後ろを向いて去っていく。≪写真はスウェーデンの牧場を走るヘラジカの子ども≫
スウェーデンの公共放送SVTが毎年春に数週間放送する、ありのままの風景をそのまま伝えるいわゆるスローテレビ「ヘラジカの大移動」の一シーンだ。
中部クルベリ地方の広大な森に約30台のカメラを設置し、ヘラジカをはじめとする野生動物の姿を24時間、あるがままにライブ中継している。
スウェーデンには30万頭以上のヘラジカが生息する。番組のファンで、余暇には狩りをするというイングバル・ペーションさん(61)は「ヘラジカは森の王と呼ばれている。スウェーデン人にとって非常に特別な象徴だ」とAFPに語った。この番組のスローで自然なペースが好きだという。
「リラックスできるし、魅力的でもある…森で過ごす時間のほとんどはさして大したことは起きない。基本的に風が吹いていて、何かが現れるのを待つ。ただ待っているだけなんて1日を無駄にしていると思うかもしれないが、そんなことはない」
5年前に始まったこの番組は大人気となり、昨年の総視聴時間は1200万時間を記録した。4月23日に始まった今年の放送はさらにそれを超えそうだ。
この地域は春になると大型哺乳類が移動するルートとして知られている。
日刊紙アフトンブラデットのコラムニスト、アンデシュ・リンドベリ氏はAFPに「たとえ大した動きがなくても、見るべきものはたくさんあるし、自然の感覚が伝わってくる」と語った。
「瞑想(めいそう)の一形態だ。多くの人が必要としていると思うし、例えばストックホルムのような大都市に欠けているものだ」
「非常に優れたショービジネスで、他の国にも輸出できると思う。何時間も座ってただ何も起きないのを見ているというコンセプトは、スウェーデン人以外にとっても健康的なはずだ」【翻訳編集AFPBBNews】
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