AI開発、遅れに危機感=全産業に影響、議論加速―政府
文章や画像などを自動で作成する生成人工知能(AI)について、政府が議論を加速させている。背景にあるのは、AI開発の遅れに対する危機感だ。基盤技術の開発やこれを応用したサービスは、米国などのIT企業が大きく先行する。AIは今後、IT以外のあらゆる産業での活用が見込まれるだけに、開発の遅れは国の競争力低下に直結しかねない。
生成AIは、基盤に大規模言語モデルと呼ばれる技術を使っている。AIの性能の差にもつながる言語モデルの規模を示す指標「パラメーター」の数は、米新興企業オープンAIが開発した言語モデル「GPT3」で1750億。これに対し、日本で最大級の言語モデルは820億にとどまる。
さらに、マイクロソフトが対話型AI「チャットGPT」の技術を自社の検索エンジンに搭載するなど、米国の巨大IT企業は基盤技術を応用したサービスを急ピッチで展開。日本企業の間でも生成AIを活用する動きが出ているが、基盤技術は海外に依存している状況だ。
今後は新素材や新薬の開発など、製造業から金融業まで幅広い産業でAIの利用が進むことが見込まれる。内閣府の担当者は「自前のAIの開発力を持っていないと、いろいろな分野で国内の産業競争力が落ちる可能性がある」と危惧する。
国内の大手企業からも国産の基盤技術開発を表明する動きが出てきた。富士通や東京工業大などは今月、スーパーコンピューター「富岳」を活用し、日本語データが中心の言語モデルの開発に取り組むと発表。NTTも年度内に独自の言語モデルを開発し、法人向けサービスへの展開を検討している。
もっとも、国内のAI開発力を高めるには、人材不足など解決すべき課題も多い。議論の加速だけでなく、国による政策的な支援も求められる。
[時事通信社]
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