林氏、拘束邦人の早期解放要求=秦氏「法に基づき処置」―対話継続を確認・日中外相会談
【北京時事】林芳正外相は2日、中国の秦剛国務委員兼外相と北京の釣魚台迎賓館で会談した。林氏は、中国当局が先月拘束した邦人男性の早期解放と領事面会の実現を要求。秦氏は「法に基づいて処置する」と述べた。林氏は沖縄県・尖閣諸島周辺で中国公船が繰り返している領海侵入も取り上げ、「深刻な懸念」を伝達した。
両外相の対面による会談は初めて。昼食会と合わせて約4時間行われた。
林氏は冒頭、「日中関係は数多くの課題や深刻な懸案に直面しており、非常に重要な局面にある」と指摘。秦氏は「両国関係が困難を乗り越えるよう推し進めていきたい」と語り、両外相は首脳や外相レベルでの「緊密な意思疎通」を継続することで一致した。
北京では3月、中国当局がアステラス製薬の50代男性社員を「反スパイ法違反」として拘束した。林氏はこれに抗議し、司法の透明性確保を要請。経済分野の協力や国民交流の拡大に向け「適切な環境を整える必要がある」と述べ、正当な経済活動の保障が必要だと主張した。
緊張が高まる台湾情勢に関し、林氏は「台湾海峡の平和と安定の重要性」を強調。秦氏は「中国の核心的利益の中の核心だ。台湾問題に干渉してはならない」と表明し、立場は平行線をたどった。林氏はまた、南シナ海進出の動きに懸念を伝えた。
ウクライナ危機について、林氏は先の岸田文雄首相による首都キーウ訪問を含め、日本の立場を説明。中国が対ロシア軍事援助に動く可能性を念頭に「責任ある役割」を果たすよう促した。日本周辺での中ロ両軍の共同活動にも懸念を示した。
林氏は、東京電力福島第1原発で生じる処理水の海洋放出について説明し、理解を要請。中国による日本産食品輸入規制の早期撤廃を求めた。秦氏は処理水について「人類の健康と安全に関わる重要な問題だ」と答えた。
一方で、両外相は2019年以来途絶えている日中韓3カ国の持ち回りの首脳会議や外相会議を再開することで一致。安全保障分野の意思疎通の重要性を確認し、日中防衛当局間のホットライン(専用電話)設置を歓迎した。
会談後、林氏は記者団に「諸懸案も含めて対話をしっかり重ね、共通の課題について協力する建設的かつ安定的な日中関係を構築する」と語った。
日中両政府は昨年11月の首脳会談で、林氏の訪中へ調整を進めることで一致していた。日本の外相訪中は約3年3カ月ぶり。
◇日中外相会談ポイント
一、林氏、拘束邦人の早期解放要求
一、秦氏「法に基づき処置」
一、尖閣で林氏「深刻な懸念」
一、台湾問題、秦氏「干渉」拒否
一、林氏、対ロ「責任ある役割」要請
一、首脳・外相レベルで対話継続
◇中国の主な邦人拘束
2010年 9月 河北省でゼネコン「フジタ」の男性4人を拘束(解放、帰国)
14年11月 反スパイ法制定
15年 5月 遼寧省で男性を拘束(刑期満了後に帰国)
浙江省で男性を拘束(服役中)
6月 上海市で女性を拘束(刑期満了後に帰国)
北京市で男性を拘束(服役中に病死)
16年 7月 北京市で日中交流団体役員の男性を拘束(刑期満了後に帰国)
17年 3月 山東省と海南省で地下探査の男性ら計6人を拘束(うち4人は解放、帰国。1人は刑期満了後に帰国、1人は服役中)
5月 遼寧省で男性を拘束(刑期満了後に帰国)
18年 2月 広東省で伊藤忠商事の男性を拘束(刑期満了後に帰国)
19年 7月 湖南省で男性を拘束(公判中)
9月 北京市で北海道大の男性教授を拘束(解放、帰国)
21年12月 上海市で男性を拘束(公判前)
23年 3月 北京市でアステラス製薬の男性を拘束(公判前)
[時事通信社]
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