原発延長法案、審議入り=60年超運転可能に―岸田首相「脱炭素と安定供給実現」
既存原発の「60年超」運転を事実上可能にする「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法案」は30日、衆院本会議で趣旨説明と質疑が行われ、審議入りした。東京電力福島第1原発事故後に「最長60年」と定めた運転期間ルールを見直し、最大限の原子力活用にかじを切る。本会議で岸田文雄首相は「脱炭素とエネルギー安定供給、経済成長の三つをバランスよく実現する」と狙いを説明した。
法案は、電気事業法と原子炉等規制法、原子力基本法など5本の改正案を一本化した「束ね法案」。既存原発は現行ルールを基本としつつ、安全審査などに伴う停止期間を算入しないことで事実上「60年超」運転を可能にする。
運転開始30年以降は、10年以内ごとに原子力規制委員会の審査・認可を受ける仕組みも導入。首相は「規制委が厳格に審査し、適合しなければ運転は一切認めない大前提は変わらない」と理解を求めた。
また、再生可能エネルギーの普及に向け、北海道と首都圏を結ぶ海底ケーブルなどの送電網整備に着手段階から交付金を支給する。首相は「来月に再エネ・水素等関係閣僚会議を開催し、政府一丸となって推進する」と述べた。
原発の長期運転を巡っては、安全性への懸念から立憲民主党や共産党が反発姿勢を強めている。共産の笠井亮氏は「原発回帰を撤回し、原発ゼロを求める」と訴えた。
一方、日本維新の会は原発利活用に対する国の責任を明確にする法案を提出し、原発の新設に首相の同意などを求めている。維新の浦野靖人氏は「運転期間延長や次世代型原発への建て替えには、国、地方自治体、事業者の責任の法的な明確化が不可欠だ」と強調した。
[時事通信社]
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