2023-03-19 15:16国際

軍事行動にいまだ消極姿勢=イラク参戦で割れた欧州―仏独

 【パリ時事】欧州はイラク戦争への対応が二つに割れた。英国やポーランドが早々と参戦を決めた一方、フランスとドイツは断固反対し、西側陣営に深刻な亀裂が生じた。関係修復に長い時間はかからなかったものの、軍事行動に消極的な仏独の姿勢は、20年たった今も基本的に変わっていないという見方もある。
 「(反対派は)古い欧州だ」。ブッシュ(子)米政権のラムズフェルド国防長官(当時)は開戦2カ月前の2003年1月、仏独を切り捨てた。主戦論を展開する新保守主義(ネオコン)の論客ロバート・ケーガン氏は「米国人は火星出身で、欧州人は金星生まれだ」と、欧米の世界観の違いを表現。米下院の食堂ではフランスへの当て付けから、メニューの「フレンチフライ(フライドポテト)」が「フリーダムフライ」に名称変更された。
 これに対し、ドビルパン仏外相(当時)は03年2月の国連安保理会合で「拙速な武力行使は重大な結果を招く。(イラクの)平和的な武装解除が優先だ」と反論。「フランスは古い大陸の古い国だが、戦争の何たるかを知っている」とやり返し、拍手喝采を浴びた。西側に属しながら対米自主独立を掲げる「ドゴール主義」外交の象徴的な一こまで、仏国内では「歴史的演説」(仏紙フィガロ)と語り草だ。反戦論の根強いドイツも歩調を合わせた。
 その後、米国は制止を振り切り開戦したが、攻撃の理由だった大量破壊兵器は見つからなかった。主張の正しさを認められる形となった仏独は、イラク復興での協力をアピールし、米国との関係改善を進めた。
 一方、対照的なのが参戦を決断したブレア英首相(当時)だ。英独立調査委員会は16年の報告書で「英国は平和的手段を尽くさなかった」「フセイン(イラク大統領)は当面の脅威ではなかった」と認定。カリスマ的存在だったブレア氏は英国で大きく評価を落とし、イラク戦争が負のレガシー(遺産)として今も重くのしかかっている。
 欧米は現在、ロシアが侵攻を続けるウクライナへの支援で結束し「誰もが火星出身」(仏紙ルモンド論説委員)となった。ただ、ロシアの脅威に敏感な英国やポーランドに比べ、仏独が武器供与などで消極的なのは明らか。イラク戦時の欧州各国の相違は、ウクライナ支援での温度差の形で残っていると言えそうだ。 
[時事通信社]

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