イラク、遠い秩序再建=政情不安、今も残る過激派―米英開戦から20年
【カイロ時事】米国が主導した2003年のイラク戦争開始から、20日で20年になる。フセイン独裁政権が崩壊し、イラクは民主化へ向かったが、政情は今も不安定だ。反米闘争や宗派対立、過激派台頭などで悪化した治安も再建は遠く、イラクはなお秩序を立て直す途上にある。
米英中心の有志連合は、フセイン政権による「大量破壊兵器の保有」を理由に、イラクの首都バグダッドを空爆。圧倒的な力の差で、3週間で首都を制圧した。フセイン像が市民らに倒された映像は、独裁支配の終わりとイラク国民の「解放」を世界に印象付けた。
だが、その後は「民主主義国家」を目指した米国による占領統治の下、イラク軍や旧体制の官僚機構が解体され、機能不全に陥った。フセイン政権では国内少数派のイスラム教スンニ派が優遇されたが、戦後に政治の主導権を握ったのは冷遇されていた多数派のシーア派。民族・宗派による分権化を進める政策がかえって国内不和を誘発し、内戦状態に突入した。
戦争を主導したブッシュ(子)米政権が、07年に治安回復のため米軍を増派。次のオバマ政権下の11年に全面撤退したが、「力の空白」から過激派組織「イスラム国」(IS)伸長を招き、米軍は駐留を再開した。17年にはイラク政府が「IS駆逐」を宣言したものの、残党が活動を続け、米軍はイラク軍への助言・訓練のため駐留を継続している。
諸外国との関係は、同じシーア派内の対立も生んだ。イラクで存在感を増すシーア派大国イランに近い勢力と、イランや米国など外国の影響力排除を訴える勢力との間で反目が深まり、22年には抗議活動が激化。民兵も加わる武力衝突に発展した。
戦争正当化の根拠となった大量破壊兵器は結局、イラクでは見つからなかった。開戦以降、戦闘やテロに巻き込まれるなどして死亡した民間人は約20万人に上るとされる。08年にイラクを訪れたブッシュ氏に「別れのキスだ、犬め」と靴を投げ付け話題になったイラク人記者ムンタゼル・ザイディさん(44)は、「米国はイラクに災難しかもたらさなかった」と振り返った。
[時事通信社]
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