2023-03-17 15:40World eye

超保守的イメージを刷新 サウジでA・ウォーホル大規模展

【アルウラAFP=時事】米ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの企画展がサウジアラビアで初開催されている。同展の狙いは、ウォーホルが描いた半世紀前のニューヨークと現在のサウジアラビアの接点を見いだすことだ。≪写真はサウジアラビアのアルウラで開催中の米ポップアートの巨匠アンディ・ウォーホルの展覧会≫
 企画展が開催されているアルウラのアートプログラミングディレクター、スマントロ・ゴーズ氏は「ウォーホルは1950~60年代の米国の激動期、まったく新しい活気に満ちた若者文化の時代に生き、それを作品に反映させた」と述べ、「今は、サウジアラビアが大きな変化、変革の時期にある」となぞらえた。
 サウジアラビアは厳しい言論弾圧や同性愛を違法とする保守的な国として知られるが、一方でアートシーンや音楽シーンが急成長している。
 ウォーホル自身は、1970年代にイランとクウェートを短期間旅した以外、中東との関わりはほとんどなかった。当時の日記には「変わったコーヒー」を飲んだと不満が書かれ、「ここには歴史がない」と結論づけられていた。
 しかし、同展に協力した米ピッツバーグのアンディ・ウォーホル美術館館長パトリック・ムーア氏は「現在起きているサウジアラビアの変化に、ウォーホルは魅了されただろう」と語る。「欧米人アーティストとして、この国でこれだけ大規模な展覧会を行うのは初めて、という点も気に入っただろう」
 ■テーマは「名声」
 砂岩の山々に囲まれた鏡張りのコンサートホール「マラヤ」の会場は三つに分かれている。
 まず最初に、ウォーホルの制作スタジオだったマンハッタンの「ファクトリー」で撮影されたビデオの上映コーナーがある。ファッションモデルのイーディ・セジウィックや俳優のデニス・ホッパー、ミュージシャンのルー・リードといった時代のスターたちの姿がうかがえる。
 次に1960年代のジャクリーン・ケネディ・オナシスやジュディ・ガーランド、1980年代のデビー・ハリーやモナコの公妃となったグレース・ケリーらセレブのポートレートが展示されるコーナー。
 そして最後の部屋には、ヘリウムを詰めた銀色のバルーンを浮かせたウォーホルの代表作「銀の雲」が展示されている。
 同性愛者だったウォーホルの私生活についてはほとんど触れられていないが、それは「名声」という今回のテーマにそぐわなかっただけだとムーア氏は言う。「誰からも『ゲイとしてのウォーホルについて言及するな』とは言われていない。同性愛者としてこのプロジェクトに参加し、自分のアイデンティティーについて自由に話すことを認められている」
 ■アラブ世界への影響力
 会場では、アラブ世界へのウォーホルの影響力に焦点を当てた展示も同時開催されている。
 「マラケシュのウォーホル」とも呼ばれるモロッコ人アーティスト/写真家のハッサン・ハッジャージュ氏は、サウジアラビアが世界的な芸術都市として位置づけようとしているアルウラでのプロジェクトに関わることができ、またウォーホルのことをもっと知る機会が得られたことに感謝していると語る。
 アートをめぐるサウジアラビアの動きをめぐっては、人権侵害から注目をそらすために文化プログラムを使用する「アートウォッシング」のにおいがするという批判もある。
 だが、ウォーホルのおいにあたるドナルド・ウォーホラ氏は、そうした批判は的外れだと考えている。「これからどうなっていくかは誰にも分からないが、私はとても期待しているし、おじのアンディの芸術を自分たちの文化空間に受け入れたサウジ政府と文化界を称賛する」【翻訳編集AFPBBNews】

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