2023-03-10 16:36

高齢者、習氏に反旗=特殊部隊が「白髪運動」弾圧―中国・武漢デモ

 中国湖北省武漢市で2月、医療手当の削減に反対する高齢者を中心とした1万人規模のデモが起き、「政府打倒」の声が上がった。香港メディアなどによると、遼寧省や広東省でも同様のデモが発生。開催中の全国人民代表大会(全人代)で、権力基盤を一層強固にしている習近平国家主席だが、大衆の不満は徐々に拡大。治安要員の大量動員で参加者を拘束し、徹底した統制で封じ込めを図っている。
 武漢での高齢者によるデモは2月8、15日に2週連続で発生。昨年、新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策に反対する人々が白紙を掲げて抗議した「白紙運動」にならって「白髪運動」と呼ばれる。
 武漢は20世紀初頭に辛亥革命の発端となった「武昌蜂起」の地。最近では、コロナ感染の爆発に最初に直面し、「英雄都市」と宣伝されている。体制にとって「模範」となってきた場所で、公然と体制批判が叫ばれた事態は、習政権にとって大きな衝撃だった。
 2月下旬、デモが起きた武漢中心部の中山公園を訪れると、広い区域が仕切りで封鎖されていた。売店で働く女性によると、仕切りはデモの後に設置されたという。女性は当日の様子について「多数の警察が出動していた。事前情報があったようで、前日から待機していた」と振り返った。武漢のタクシー運転手は「警察は周辺の道を封鎖していた。他都市からも動員されたのだろう。特殊部隊が目立った」と話した。
 当局はデモ参加者らの摘発を進め、2月中に少なくとも5人を逮捕。逮捕者には、新型コロナで父を亡くし、政府の責任を追及してきた張海氏も含まれると報じられた。
 こうした状況を反映してか、「当事者」に当たる年齢の市民は一様に口が重い。多くの高齢者にデモに関して尋ねたが「何も知らない」と首を振るだけだった。
 医療保険制度の変更は、毎月支給される補助金が7割減となるなど、高齢者の生活を直撃した。制度変更の背景には、ゼロコロナによるPCR検査の実施などで地方財政が逼迫(ひっぱく)していることがある。香港紙・明報によると、3億5000万人が制度変更の影響を受けるとみられている。
 昨年11月の北京の白紙運動は若者が主体だった。ある知識人は「(1960、70年代の)文化大革命や(89年に民主化運動が武力弾圧された)天安門事件を直接知らない若い層は共産党の怖さを知らない」と指摘した。白髪運動は「怖さ」を熟知する世代が反旗を翻しており、体制への不満は相当に根深いと言える。 
[時事通信社]

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