原発回帰、疑問解消せず=はぐらかす岸田首相、腰引ける野党
岸田政権が昨年暮れに打ち出した「原発の最大限活用」方針が、今国会の主要論点の一つだ。東京電力福島第1原発事故以来のエネルギー政策を大きく変更するものだが、岸田文雄首相は「政策転換」を認めず、はぐらかす答弁が目立つ。野党の追及も迫力を欠き、疑問解消に程遠い。
「原発政策の大転換はどうしてか。説明がほとんどない」。立憲民主党の岡田克也幹事長が1月30日の衆院予算委員会でこうただすと、首相は「大転換と言うが、方針は変わらない」と言い放った。
政府は昨年12月に「GX(グリーントランスフォーメーション)」基本方針を決定し、原発回帰の姿勢を鮮明にした。(1)次世代原発を開発・建設する(2)既存原発の60年超の運転を認める―ことが柱。事故以来、原発の新増設や建て替えは「想定しない」としてきた歴代政権の立場を覆した。
それでも転換を認めない首相は、2021年10月に閣議決定した第6次エネルギー基本計画に「原子力は持続的に活用」と記されていることを理由に挙げる。新方針は従来の見解と整合するとの立場だ。
原発活用の目的として、首相は「ロシアのウクライナ侵略で世界的なエネルギー危機が生じている」と説明したが、岡田氏は納得しなかった。「原発建設は5~10年の話ではなく、時間軸が違う」と反発した。
立民は原発に頼らず、再生可能エネルギーを主力化するよう主張。首相は「再エネ最優先」を掲げつつも、「わが国は山と深い海に囲まれ、再エネ適地が限られる」と反論する。
安全確保の議論もかみ合わない。岡田氏は民主党政権時代に発生した東電事故に関し「本当に苦しい思いをした」と指摘し、「例えば水素爆発、メルトダウンが起こらないための対策はどう講じるのか。核は暴走すれば止める術がない」とただした。首相は「専門家会合で1年間にわたり100回以上、安全対策の議論を積み重ねた」と理解を求めた。
北朝鮮のミサイル発射を念頭に、岡田氏は原発に着弾すれば「日本の国土の何割かが失われるかもしれない」と危機感を訴えた。だが、首相は「だからこそ、防衛力を抜本的に強化しなければならない」と議論をすり替えた。
もっとも、論戦が深まらないのは正面から答えない首相の姿勢だけが原因ではない。防衛政策や少子化対策に比べ、立民が予算委で原発問題を取り上げる時間は短い。政府に一定の理解を示す日本維新の会との足並みの乱れを気にしていることや、立民内で原発活用に賛否両論があることが背景とみられる。
政権から距離を置く自民党の閣僚経験者は「国会を無気力が覆っている。首相も野党も責任放棄だ」と嘆いた。
[時事通信社]
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